ランエボとインプレッサの小話 その5
ではまず、排気系チューンから考えてみましょう。
エンジンを出た排気ガスは、まず始めにエキマニを通ります。
そしてタービンを通り、アウトレット、フロントパイプ、触媒、マフラーという順番ですね。
この中でも最も多くの人が交換し、コスパも良いのがマフラーでしょうか。
またフロントパイプは比較的安価で効果も大きいでしょう。 逆にエキマニや触媒は高価ですよね。
では始めにインプレッサの排気系チューンについて考えると、まず
触媒の交換が必須と言われているようです。
純正は抜けが悪いらしいですね。 触媒はマフラーよりも上位に位置しているので、ここで詰まっていてはいくらマフラーを抜けの良い物に変えても無意味です。
よって、インプレッサの排気系は高価なスポーツ触媒に変える必要があり、お金がかかります。
またエキマニも水平対向エンジンですから、とても長く複雑な形状となりますね。 これもやはり価格は高めとなるし、エンジンの下を通るため、中には最低地上高を下げたりする製品も有るので選択に注意が必要でしょう。
対するランエボは、純正触媒が良く出来ているので、ブーストアップ程度ならば純正でかなりの所まで行けます。
まあ恐らく変えたほうがベターですが、純正でも行けてしまうところがメリットですね。
またエキマニもこれまた純正がとても良く出来ているので、特に軽量化などを狙う目的以外には変更する必要はないでしょう。
下手に社外品にするとレスポンスが落ちることが多いそうです。
とにかく三菱は純正品がとても良く出来ているのです。
触媒までキチンと変えていれば、マフラーやフロントパイプについてはどちらも似たようなコスパでしょう。
次に吸気を考えてみましょう。 吸気系と言えば、まずはエアクリーナーでしょうか。
インプレッサはGC8時代のエアフロはかなり酷い出来で、フルノーマルであっても二年程度で壊れたものでした。
まだエアフロがユニシアジェックス製の頃ですね。 社外のエアクリーナーなんかに変えると一発で壊れたので、
“インプレッサにエアクリ交換は禁物”、なんて言われていましたね。
ですがエアフロがデンソウ製になってからは、かなり安定してきたようです。
それでも大幅に吸気効率のいいエアクリへの交換は難しいという印象がありますかね。
対するランエボは、エボ5以降はとてもタフで高性能で、エアフロトラブルはまずありません。
それ以前のモデルであっても純正交換タイプエアクリや、ましてや純正のエアクリで壊れるようなことはなかったと思います。
ターボ車のエアフロトラブルは日産車でもよく聞くものなので、三菱製はとても良く出来ている部類でしょう。
ただインプレッサもランエボも、むき出しのいわゆるキノコ型エアクリについては、コンピューターセッティングをキッチリした方がいいようですね。
それでもランエボは細かいことに鈍感というか頑丈なエンジンなので、結構そのまま乗っていてノートラブルの人も多いようです。 何というか
インプレッサはデリケートで、ランエボは無茶がきく(純正のカバー範囲が広い)って感じですね。
次に燃料系ですが、インジェクターは圧倒的にランエボが優れているでしょう。
400馬力程度までならノーマルで十分のようです。
これも純正品が
ツーホールタイプでよく出来ているので、下手に社外
(ワンホールが多い)に変更すると霧化性能が落ちるほとです。
対するインプレッサは、350馬力程度までといったところです。
次に燃料ポンプですが、これは両車とも変えておいたほうが無難なようです。
ランエボにおいて、一番始めに性能の限界が来るのがこの燃料ポンプのようですね。
ただ燃料ポンプはそれほど高価ではないので、敷居は低いでしょう。
そして点火系ですが、イグニッションコイルとケーブルは、ランエボは純正品が最も優れているので
変更しないように。社外品にしてトラブるケースがとても多い部分です。 インプレッサについてはよくわかりませんが、特にトラブルは聞かないので純正で十分ではないでしょうか?
スパークプラグについても、ランエボはVer6.5以降なら純正でイリジウムプラグ!が付いているので、かなりのハードチューンでなければ、純正で高いパフォーマンスを出せてしまいます。(インプレッサはGDBまでは白金製のようです)
またランエボ5以前までは、ガソリンが少ない状態で走ると燃料偏りが発生することが有るので、サーキットなど強い横Gが長く続くコースを走る際はガソリンを多めに入れるか、コレクタータンクを付けるか、対策済みであるエボ6以降を選択するのが良いでしょう。
インプレッサも同様に少なくともGDBでは全モデルのSTIで燃料偏りが起きるので、コレクタータンクを付けるか、対策されたスペックCを選ぶのが良いでしょうね。
最後にエンジンオイルについても、三菱は
純正オイルがとても優秀です。
一番安い鉱物油であっても優秀なので、競技に出場するのでもない限り特に高価なものに変える必要はないしょう。
(オイルクーラーも付いていますしね)
ちなみに三菱はディーラーで扱っている純正オイル添加剤もとても優秀なので、これも下手に社外品を入れないほうが良いと思います。
スバルに関しては油脂類は平均的な性能なので、まあ、スポーツ走行をするなら少しいいものに変えてあげた方が良いでしょう。
もうひとつ、ラリーなどストップアンドゴーが多いシーンで大きな武器となる、スバル呼びだと
ミスファイアリングシステム、三菱呼びだと
2次エア供給システム(トヨタ呼びや英語では
アンチラグシステム)についてです。
これは、ランエボ3以降にはオートマモデルなど特殊モデル以外には、全て標準搭載されています。
インプレッサはGDB以降に標準搭載です。
ただ当然市販状態ではECUによってキャンセルされているので、ECUをいじるだけでその機能をアクティブにすることが出来ます。
さて、これらのいわゆる“ブーストアップチューン”で、ランエボはVer9以降ならポンと400馬力程度出てしまうそうです。
MIVECが付く前のVer8MRでは、380馬力といったところのようです。
同世代のインプレッサに関しては、やはり前置きインタークーラーに変更しないと330馬力以上はキツイそうですね。
頑張って350馬力といったところではないでしょうか?
まあそれ以前にラジエーターやオイルクーラーなど冷却系をキッチリやらないと実用的でないと思いますが……。
さらにインジェクターや触媒と、インタークーラー以外にもやるところが多いですね。
またインタークーラーやインジェクターをかえたら、コンピューター現車合わせも
“マスト”です。
ちなみにコンピューターの現車合わせだけで、通常は10万円以上かかります。
さて、
これら全てを総評すると、ランエボのパワーユニットはインプレッサと比較して
全体的にオーバークオリティーに作ってあると言わざるをえないでしょう。 つまりパワーの上げしろ、マージンが大きいのです。
これはエンジン本体だけでなく、インタークーラー、冷却系や燃料系、触媒など全てにおいてオーバースペック気味なためです。
ランエボは第2世代のGT-Rに搭載されたRB26並とまでは言いませんが、マージンが大きいというよりも、
市販状態ではかなりパワーを抑えて売られているという表現が正しいでしょうね。
さすがにWRCでずっと改造範囲の狭い(つまり市販状態に近い)グループA規格で出場していただけありますね。
(しかもそれで勝っていましたから)
対するインプレッサは、カタログ値こそランエボを上回っていることもありましたが、
ノーマル状態で結構ギリギリのようです。
ライトチューンレベルでは、パワーの上げしろはあまり無いといえると思います。
(ちなみにタービンや排気量を変えたハードチューンでもEJ20は4G63よりもパワーは低め。もともとコンロッドが極端に短いEJ20は、ストロークアップが難しいし(更にコンロッドが短くなって余計振動がひどくなる)、ボアアップもアルミの薄いブロックなので不可能に近い。よって結局EJ25などの違うエンジンへの載せ替えで排気量アップをするしか無い。対する4G63はストロークアップが容易で、ブロックもとても頑丈)
よって安く、手軽なライトチューンで大幅にパワーを上げられるのは、
圧倒的にインプレッサよりもランエボだと言えるでしょう。
交換が必須なのはマフラー程度で、補機類やエンジンオイルを含めどこもいじる必要が有りませんから。
ランエボのエンジンは確かに重く重心も低くはないですが、パワーユニットとして見ると、これはとても優れていると言えるのです。
続く……
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