ランエボとインプレッサの小話  その6



さて、ではパワーユニットの話はこの辺にしておいて、次に駆動系に行きましょうか。

エンジンの先にはフライホイールとクラッチが繋がっていますね。
純正フライホイールの性能については、どちらも同じようなものです。

ただし、クラッチについてはランエボのCP9A(エボ6以前)までは、少し滑りやすく寿命が短めと言われています。
キャパも少し小さめなため、ライトチューンであっても簡単にトルクの上がる4G63においては滑りやすいので、純正ではここが弱点と言えるでしょう。
また横置きエンジンはクラッチ交換が大変なので、工賃がとても高くなります。
ディーラーであれば全て安価な純正部品で交換しても、工賃込みで20万円近くなるところがネックですね。

(中古でランエボを購入する際には、購入前の整備にクラッチ交換をねじ込めれば、かなりお得になります。20万円の殆どは工賃なので、クラッチ交換してから納車してもらえれば、実質20万円近くの値下げと同等と言えるでしょう。また多少の額なら、プラスで払っても良いでしょう。なお部品はエボ9のものが最も圧着力、耐久性共に優れるので、CP9Aであっても移植をお勧めします。ただし、CPではクラッチディスク、クラッチカバー、フライホイール以外にもいくつが変えなければならない部品が有るので(いずれも安い小物)、その辺はよく調べて用意してくださいね。或いはパワーを上げる予定が有るなら、クラッチが滑るかどうかヒヤヒヤしながら乗るよりも、(純正部品と比べるとかなり高くなりますが)社外品を入れてしまうのも手です。社外品なら、ダイナミックバランスを取ってあるものが良いでしょう)


一方インプレッサは、純正クラッチは特に弱くないし、縦置きエンジンなので交換も比較的楽です。
よって、クラッチ廻りについてはインプレッサが優れていると言えるでしょう。
 

では次に、クラッチの先にあるミッションについてです。
インプレッサは、GC8時代は“ガラスのミッション”なんて言われていたほど、ミッションが弱くすぐに欠けてブローしたものでした。 車がフルノーマルであってもブローしたのです。
これは、軽量化のためミッションのギアブレードを薄くしすぎたなんて話がありましたね。
後にマイチェンで少し改良され、GDBになってからは6速となって、特に強くも弱くもない標準的な強度になったようです。

対するランエボのミッションは、初代からとても頑丈です。
なにしろ、700馬力オーバー、トルク70Kgfオーバー!のタイムアタックマシンであっても、ミッションはノーマルのままで問題なかったそうです。 よって、ライトチューン程度で壊れる心配は無用ですね。
ただし!それは5速ミッションの話です。 エボ8以降に搭載される6速ミッションについては、標準的な強度だそうです。
ランエボはRSでは5速が選べるので、トルクの太いランエボには5速ミッションをお勧めします。
(どうしても高速道路で燃費と騒音対策のために低回転で走りたいから6速が必要、などといった用途を除く。エボ8以降の6速車であっても、5速ミッションが容易に移植できます)

それと三菱の素晴らしいところは、5速ミッションに限りますが、純正で色々なギア比が選べることです。
これもラリーを始めとしたレースに出るための、レギュレーション上の都合です。
レースによっては、「ミッションは純正部品以外搭載不可」というルールが有るため、純正で色んなギア比が用意されているのですね。 さすがはグループAで戦っていた車です。

よってミッションについては、圧倒的にランエボの勝ちでしょう。



次にデフとトランスファーについて書きましょう。
トランスファーというのは二駆しか乗ったことがない人には馴染みがないと思います。
トランスファーとは、四輪駆動車において駆動力を前後に分ける装置です。

ランエボは、初代からエボ10まで全てのモデルで前後駆動力配分が、50:50です。 ええ、一貫していて迷いがありませんね。
対するインプレッサは、GC8の頃はかなり後ろ寄りの駆動力配分で、これはFRっぽい配分にすることで旋回性能を上げることを目指したためでしょう。
ですが後に駆動力配分はモデルごと言っていいほどに、細かく変更されています。 中には前輪の配分の方が大きいモデルもあります(確かGDBのF型とG型)。 この辺は良く言えばトライアンドエラーを頑張っているといえるし、悪く言えば最適解が見つからずに迷いが有るともとれますね。
 


次にデフですか。
センターデフについては、サスペンションを物理するに詳しく書いてきたので省略しましょう。

前後のデフについては、個人的には同世代であればランエボの方がやや先行してた印象ですかね。
いち早くフロントにヘリカルLSDを入れて劇的に速くなったエボ5。
リアにはじめてアクティブデフAYCを搭載したエボ4。 どちらも三菱の方がウワテでした。


 
次にドライブシャフトとハブですかね。
ランエボのハブは、これまた初代からミッション同様にとても頑丈です。 どんなハードチューンをしてもまず問題ないでしょう。
対するインプレッサは、GC8やGDBのD型以前のハブはお世辞にも強いといえませんでした。
タイヤのインチアップやサイズアップをすると(特にフロントが)一発で壊れると言われていましたし、そもそも見た目からしてホンダの軽自動車並みのサイズしか無いほどにキャパ不足だったと思います。

GDBのE型からPCDが変更されて(100mmから114.3mm )大きくなって、大分良くなったようです。 つまり、スバルもキャパ不足だったと判ったのでしょうね。 ちなみに確かBRZに採用されているのは、その以前の小さいサイズのハブだったと思います。

よって、ハブについては圧倒的にランエボの勝ちでしょう。

ドライブシャフトについては、私の知る限りでは両車ともに特に弱いと聞いたことはありません。


続く……


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