ランエボとインプレッサの小話  その7



では次に足廻りの話に入りましょう。

ランエボはエボ4から、つまりCP9Aからはフロントがストラットサスペンション、リアがマルチリンクサスペンションです。
対するインプレッサは、GDBまでは全て四輪ストラットサスペンションです。
インプレッサはリアもストラットサスペンション……。

例えばホンダ車なんかだと、ストリームのようなFF車のミニバンであってもリアにはダブルウィッシュボーンサスペンション(ダブルウィッシュボーンもマルチリンクの中の一つ)です。
それがあの走りの素晴らしさを生んでいるのでしょう。 つまり、後輪が駆動していないFF車であっても、ある程度走りを売りにする車種の後輪にはダブルウィッシュボーンが奢られているわけです。

ストラットサスペンションはストローク時のアライメント変化が大きいため、特にリアに採用するとスキッド特性(滑り出し前後)がどうしてもピーキーになります。
また車高を下げるとロール軸が大幅に下がり限界が下がってしまうので、速く曲がろうと思ったらインプレッサに車高ダウンは禁物だ、なんて言われていました。
つまりノーマル車高が最も速く走れたのです。
まあ後にロールセンターアジャスターなどが発売されてから事情は少し良くなりましたが、それでもリアのトラクションの低さは変わりませんでした。

インプレッサもGRBになってやっとリアにダブルウィッシュボーンサスペンションが採用され、リアのトラクションとコントロール性が格段に上がったようです。 これはあの新井敏弘選手が言っていた言葉なので、まあ間違いないでしょう。
(私が運転した限りでも、GRBになって回頭性、コントロール性共に「格段に良くなった」という印象です。 特にGRBのベースモデルであるNAモデルをはじめて運転した時には、「まるで絶対にスピンしないS2000のようだ」と思ったほどでした)

 
対するランエボは、エボ4からずっとリアがマルチリンクで、それもFR車並みに凝った作りのものでした。
なのでフルノーマルでリアの細かいトー&キャンバー調整も出来るし、ストロークに対するアライメント変化が正常で、車高を落とせばよりコーナリングが速くなったし、トラクションも抜群です。
それこそ巷では「トラクションの化物」などと言われるほどでした。

またスライド時のコントロール性も大幅にインプレッサよりも上だった思います。
まあ、電子制御なしでも速く走れるのかに書いた中谷選手によるゼロカウンターのコーナーリングを見ればそれが分かるでしょう。 ちなみにあの走りは、GDBのインプレッサでは中谷選手が何度トライしても不可能でした。
よってサスペンションの出来に関しても、ランエボの圧勝と言えるでしょう。

電子制御が無くても、四輪駆動車の最大の売りであるトラクションとスライドコントロール性はランエボの方が上でした。
 

 
ブレーキについて:

次にブレーキについてですが、先にブレンボキャリパーを搭載したのは、これまたランエボでした。
エボ5以降ですね。 インプレッサも途中からブレンボ搭載になりましたが、両者は微妙に異なります。
ランエボのキャリパーは、キャリパーの両方に油圧を掛けるためのホースが外を通っています。


これは、キャリパーの中を通すとキャリパーの剛性が落ちるため、わざわざ外を細いホースで通しているそうです。
対するインプレッサは、キャリパーの中を通っていますね。

それとランエボのブレーキホースは純正でバネのような形の金属の中を通っています。これは石などのヒットや、タイヤなどとの干渉からブレーキホースを守るためだそうです。
ランエボが実戦的に細かい所まで気を使っていることがよくわかりますね。
逆にインプレッサは、一般人が気づかないところは“普通車クオリティー”って感じです。
 
ブレーキタッチについては、両車とも特に優劣は感じませんでした。
ただGDB以降のインプレッサは全体的に高速域だと、ブレーキの効きが落ちる印象がありました。 奥で効かない感じです。
でもこれは純正パッドの性能かもしれないため、理由は不明です。
個人的には、GC8の片持ちキャリパーのフィーリングの方が好きでした。
 
対するランエボは、CP9Aまでのブレンボ搭載モデルはキャリパーのサイズに対して、マスターシリンダーのサイズが小さめな印象です。
そのせいかブレーキパッドが減ってくると、ブレーキペダルのストロークが多くなりますかね。
よってプレブレーキが必要となる事が多いでしょう。
(CP9Aは、少しμが高めで耐フェード性の高いパッドに変えるのがお勧めです)

CT9A以降はマスターシリンダーが大きくなっているので、かなり改善されています。
またマスターシリンダーだけでなくバルクヘッドの剛性アップも有るでしょうが、タッチのフィーリングもエボ7以降はCP9Aと比べてかなり良くなっていますね。
 
車の制動力については、インプレッサの方が低重心でピッチングが少なく、ランエボより若干前後重量バランスも優れているので良く止まりそうですが、実際にはランエボの方が強烈なストッピングパワーの印象です。
これはCP9A対GC8にしても、GDB対CT9Aにしてもモデルを問わずそうでしたかね。

CP9A対GC8では“剛性+ABS”の違いによりランエボの制動力の勝ちで、GDB対CT9Aでは“電子制御センターデフ+ABS(+AYC)”の出来の違いにより、ランエボの制動力の勝ちって感じです。
 
まあブレーキ性能についてはパッド変更で特性が変わることも有るため、ここではスバルに甘めにして、取り敢えず互角ということにしましょう。
 
 

シフトフィールについて:

ランエボは、横置きエンジンの割に良い。 インプレッサは縦置きエンジンの割に普通。
よって互角。


余談ですが、私個人的にはパワーバンドの広いランエボに6速ミッションは必要ないと考えています。
ランエボには強度と軽さとフィーリングに優れる5速ミッションをお勧めします。
(ランエボが6速にしたのは、速さの追求というよりも恐らく(スペックでインプレッサに対抗するなど)マーケティング的な理由でしょう)


続く……


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