さて、思いのほか好評の試乗記、第三弾は新型マツダロードスターです。
先日ディーラーで試乗してきたので、簡単にそのインプレを書いてみます。
マツダのロードスターと言えば、人馬一体を売りとするマツダのオープンスポーツカーで、世界で一番売れているオープンカーのようですね。フロントミッドシップエンジンと軽量なボディーが繰り出すヒラヒラ感は独特で、初期型のNA型からNC型までそのコンセプトは一貫していました。
私はNA、NB、NC型のすべてのモデルを運転したことがありますが、確かにその味はずっと受け継がれていると思いました。
ただNC型では車重が重くなり、それを補うために排気量も2リットル化され、軽量コンパクトというには少し大きくなりましたかね。
そんなロードスターが原点回帰して、NA型のコンセプトに立ち戻ったのがND型とのことらしいです(ディーラーの方談)。
実際にND型は一番下のグレードの車重が990Kgと、昨今の車としては異様ともいえる軽さですね。それに合わせてエンジンもサイズダウンされて1500ccに。全長も4mを切っています。そしてエクステリアデザインはネットなんかにも出ていましたけど、かなりおしゃれでセクシーなデザインですよね。個人的には、何となくフェラーリを思い出しました。
1500ccのエンジンに4mを切る全長に、1トンを切る車重。それでも3ナンバーなのは、幅が広いからです。これはまあ、走行性能を考慮しての全幅なのでしょう。 実物を見ると、大きめの軽自動車か? と思うほどにコンパクトに見えます。
それでは早速運転席に座ってみましょう。
コックピットはタイトで、ヒップポジションも低いですね。いわゆる座りながら地面でタバコを消せるポジションです。ただ、ドアを閉める時の剛性感は高いです。ここらへんは、さすがに今どきの車ですね。NA型のドアは紙みたいでしたから(笑)。
また、コックピット周りのデザインも奥行き感があり、カッコよくて好感が持てました。
ではエンジンを掛けて発進。軽い車だから本当は一人で乗りたかったけど、営業マンが同乗です。タイヤが転がって思ったことは、まずなんというか、抵抗が少ないフィーリング。車体が軽いためか転がり抵抗も少ない感じです。ただ、NA型と比べると味は意外に違うかな?って思いました。
紙みたいにペラペラでボデイーの剛性の低いNA型と比べると、ぐっとソリッドな走行フィーリングです。あちこちからミシミシいうこともありません(笑)。まあ、ハーシュネスは少ないです。かと言ってS2000の様なカチッとしたフィーリングとも少し違い、しっとりとしていますかねえ。NA型のボデイーがベニヤ板、S2000がコンクリートとするなら、コルクって感じです。
シフトノブはとても短いですがゲートは意外と広めで、これまたS2000の様なカッチリ感はないかな。おそらくRX-8何かと同じフィーリングでしょう。
次にエンジンですが、クラッチをつないで発信する時のフィーリングが何というか、フライホイールがとても重い様なフィーリングです。逆にエンストは絶対にしない程にクラッチミートは楽でした。まあ、万人向けの設定なのでこうなっちゃうのでしょうか……。
またブリッピングのレスポンスもはっきり言って悪いです。これはターボエンジンと比べても良いとはいえない程ですかねぇ。
シフトダウンの時に、回転数を合わせるためにアクセルを煽るのが結構大変でした。このへんは、小排気量のNAエンジンらしい右足に直結しているような、“ビンビン”と来る軽快なフィーリングが欲しいところですねえ。
でもこれはフライホイールではなく、もしかしたら電子スロットルのレスポンスかもしれません。もし電子スロットルなら、プログラム変更だけで改善されるので楽ですね。
では少しアクセルを踏んで回してみましょう。2速から全開にすると、とにかく下のトルクが凄く有ります。ですが、上がどうにも回らないフィーリングです。うーん。別にパワーは無くてもいいんですが、何というかエンジンのまわり方にドラマがないんですよねぇ。
これはVTECエンジンと比べるまでもなく、NC型、いやNA型のエンジンのフィーリングの方が良かったような気がしました。まあ、NCとは排気量が500cc違いますけどね。
一言で言うなら下のトルクがあって運転が楽な実用的なエンジン、と言った感じです。ではこれがスポーツカーのエンジンかと言われると、「??」と言った感じです。
個人的には、もう少し刺激が欲しいところです。音もジェントル過ぎる気がしました。
さて、それでは肝心のハンドリングとコーナリング性能と行きたいところですが、ロードスターは試乗コースが厳しく決まっているらしく、交通量の多い町中を走っただけです(涙)。しかも殆どが直線と交差点です。それではさすがに分かりません。
マツダさん、せっかく試乗しに来たんですからもう少し乗せて下さいよ(笑)。
ロードスターは嗜好性の強いスポーツカーなんですから、その走行性能が購買の大きな要素となるはずです。しかもハンドリングマシンなんだから、少しはコーナーも走らせてくれないと買うも買わないも判別しようが有りません。しかも諸費用込みで乗り出し300万近いんですから、それは慎重に車の性能を知りたいと思うはずです。ギャンブルで買える額ではないですからねぇ。
それとも今時はスポーツカーでも走行性能を重要視する人がいないんでしょうか……。
一応数少ないコーナーをゆっくり走ったフィーリングでは、おそらくコーナリング性能は高そうでした。歴代のロードスターの味は、きっと残していると思われます。ヨー軸がドライバーの近くにあり、とにかく思った以上に曲がるフィーリングでした。この辺は、スタビリティーよりもアジリティーを優先しているという、コンセプトがビシッと有りますね。おそらくワインディングなんかでもハンドリングが良く、振り回しても楽しい車だと思いますよ。ただ、NA型やNB型の持つある種の「危うさ」というか、ヒラヒラ感は少し減っていますね。剛性が高く、しっかりしていてソリッドなフィーリングです。NA型を超軽量でアナログなゼロ戦とするなら、ND型はぐっと現代風なF-2と言ったところでしょう。
ただこれをスポーツカーの入門車と考えると、価格が少し高いですねぇ。あと50万円安ければ、若い人が買いやすいと思うんですが……。
前から思うんですが、なんつーかマツダって車はいいんですが、商売が下手な気がします。良く言えば通好みの車なんですが、一般人から今一理解されにくい。
スポーツカーなんだから燃費なんて多少犠牲にしてもっと気持ちいいエンジンを載せて、剛性落としてでももう少し価格を安くすれば、バカ売れする気がするんですよね。
それと、ディーラーの対応もトヨタやホンダと比べると見劣りすると言わざるをえないかなぁ。
なにはともあれ、もう少し試乗させてくれー!!(笑)
以上