図1 車体が回転しないコーナリング
図1は、車はずっと同じ方向、つまり図の上を向いたままです。
うーむ。車がこの様に曲がる事は不可能ですねぇ。
ホバークラフトや、ヘリコプターならば、こんな動きが出来るかも知れませんが…。
実際には車は、下図のように曲がるはずです。
図2 車体が回転するコーナリング
さて、これは上を向いていた車が、180度曲がるコーナーを通ると、下を向くわけですね。
つまり、車体自体は180度向きを変えている、つまり回転している訳です。
これはコーナリング中の車というのは、常に回転中である事を意味します。
逆に言うと、この回転が出来なくなった時、回転し続ける事が出来なくなった時には、曲がる事も出来なくなる訳ですね。
自動車の世界では、この回転する力の事を「ヨー」と呼んでいますね。物理では、一般に回転モーメントと呼びます。
ヨーを作るとか、旋回ヨーを立ち上げるとか言うのは、回転させるという意味です。
また車用語で良く出てくる、「ヨー軸」と言うのは、この回転する車体の中心軸の事です。
(ランエボZ以降についている、電子制御のAYCと言うのは、アクティブ・ヨー・コントロールシステムの略です。日本語にすると、積極的な回転制御システムでしょうか?)
良くミッドシップのスポーツカー等で、「低ヨー、低重心」と言う言葉を聞くと思いますが、これは車体の重心が低く、車体を回転させやすいと言う意味です。
何故低ヨーの車が良いかと言うと、回転させやすいと言う事は、コーナリング中に車体が回転を続けやすく、結果的に曲がりやすい車と言う事になるからですね。
車体の回転が止まった時点で、車は真っ直ぐに行こうとする、つまり曲がらずにアンダーステアになる訳です。
乱暴な言い方をすると、速くコーナーを曲がるためには、いかにアンダーステアを出さないかに尽きます。
では、そのためにはどうすれば良いのか??
簡単です。「月」になればいいのです(笑)。
でわちょっと分かり易く解説しますね。
地球って自転していますよね? 知っての通り24時間で、一回転です。
そして、同時に太陽の周りを公転していますよね? これも知っての通り、365日で、一周です。(正確には、365日と6時間なので、うるう年が4年に一回ある)
これより、地球は24時間で1回転して、365日で1周曲がっている事になりますね。
車に例えれば、円周上を一周曲がる間に365回スピンしている訳です。
当然、こんな動きは車には無理です(笑)。
ただ、月は特別です。 実は月も自転していて27.32時間で、一回転しています。
そして、これまた偶然に27.32時間で地球の周りを公転していて、一周しています。
ということは、月が一回、回転(スピン)する間に、地球の周りを一周している事になります。
つまり、自転の周期と、公転の周期が偶然に同じ時間なのです。
その証拠として、月はいつも同じ面を僕らに向けていますよね?
これは、車のコーナリングと同じです。
コーナーの中心部にいつも同じ面を向けられるような運転をすれば、アンダーステアもオーバーステアも出ない訳です。
コーナリングと言うのは、結局この車の自転と公転のバランスで決まります。
自転の回転周期が速すぎても遅すぎてもダメです。
一般に、速すぎればスピンするし、遅すぎれば曲がりきれません。
車を運転する時には、常にこれを意識する事が大切です。
自動車用語で言うと、正しいヨーを出し続けることですね。(「ヨーコントロールを楽しむ」、なんて言葉は良く聞くと思います)
プロドライバーなどが良く、「向きを変える」だとか、「姿勢を作る」だとか言うのは、このヨーを作ること、つまり車体を回転させると言っているだけです。
実はとても簡単ですね。
これから説明するコーナリングの技術は、手段や理屈はどうであれ、究極のところその目的は、「正しいヨーを出し続ける事」です。
(まあ実は、それを超えた新しい理論と言うのが有るのですが、それはまた後で説明します)
ここでも今後、自転や公転と言う言葉は良く出てくると思うので、覚えておいてください。
また、姿勢だとか、ヨーと言う言葉も良く出てくると思います。
さて、
しかし今回練習用に勧めたFF車では、その基本特性として、車体の回転が遅い方向に行きます。
つまり、曲がらない方向ですね。
FF車がアンダーステア特性となる最大の原因は、それです。
よってFF車では、いかに車を回転させられるかが非常に重要となりますね。
実際にFF車のドライビングの練習は、この車体を回転させる、そして回転を続ける練習がほとんどだと言っても、過言ではありません。
ちょっと長くなったので、、、続く…。