1500円でロールセンターをアジャストする


さて、S2000に採用されているダブルウィッシュボーン形式のサスペンションは、車高を下げてもロールセンターがストラット式などと比べて、下がらないので有名ですね。
(ロールセンターという概念を用いた説明は、賛否両論あるようですが、私は分かりやすい説明だと思っています。)

ロールは、基本的にこのロールセンターと言われるロールの中心と、重心の距離で決まると言われています。
この距離が近いほどロールモーメント(ロールさせようとする力)は小さくなり、ロール剛性が上がるというわけです。

しかし車高を下げると、ロールセンターが下がってしまうと言うのも、これまた構造上仕方が無いことです。
これを補正するために、「ロールセンターアジャスター」と呼ばれる物が多くのメーカーから発売されていますね。
それらの基本的な原理は皆同じで、ロアアームとハブを接続する所に金属のスペーサを挟み、ロアアームの角度を変えてやると言う物です。
ただこれは、まず部品が高いし、アームなどを外さないといけないし、取り付けもリアは圧入が必要だったりと、かなり大がかりな作業となりますね。
当然、アームを外すのでアライメントも取り直さないといけません。

更に、ホイールを17インチ以上にしないと取り付けられないので、これまた16インチの車に乗っている人は、インチアップしなければならず、お金が掛かります。
また16インチタイヤが好きな人は、困りますね。

初期型のノーマル車に乗っている人だと、部品代、取り付け工賃(ディーラーではやって貰えないかも)、アライメント代、17インチ以上のホイールとタイヤ代、と言った具合で 、かなりの額になりますね。
またこれらの部品を付けると、ノーマル車高だと不具合が起きる事が多いらしいので、車高調のO/H時などノーマルサスペンションを付ける時には困りますねぇ。
勿論、取り付けが大変な分、効果も大きいのでしょうが、もうちょっと手軽な方法を考えてみました。

その方法とは、「トレッドを広げる」と言う物です。

一応、下図の様な理屈です。 図は車を後ろから見たもので、見やすくするために左側はカットしてあります。

緑の丸のロールセンターAが元のロールセンターで、オレンジの丸のロールセンターBがトレッドを広げた際の、ロールセンターです。

図は解りやすくするために大げさにトレッドを広げていますが、実際に方向性としてはロールセンターを上げる方向になることが分かりますね。

トレッドを広げる方法は色々ありますが、理想的なのは好みのオフセットのホイールを、ワンオフで作ることでしょうか。
逆に、一番安いのは、ワイドトレッドスペーサでしょう。
それも、ボルト付きではない薄い物ですね。大体1500円もあれば、量販店で左右1セット買えます。
ハブボルトがノーマルだと、実質選択肢は、5mmか3mmになると思います。
ただし、3mmの物は、物によっては割れる事が有るそうなので、セッティングが決まったら良い物を選ぶことをお勧めします。


それ以上厚い物を入れるには、ロングハブボルトに打ち替える必要が有りますが、ディーラーでやると、工賃が一か所15,000円と結構高いですね。 左右で30,000円、4輪だと60,000円です。
S2000は 他の車種と違って、ボルトを打ち替えるにはアーム類を外さないといけないため、高くなるそうです。
また、ボルトを外す際にハブベアリングが破損することも有るそうで、結構大がかりだそうです。

アームを外すので、当然アライメントも取り直しです。 もしベアリングを破損したら買わなければならないし、結構値が張りそうですね。
ここまでやるのなら、いっそ好みのオフセットのホイールに代えた方がいい気がしてきますね(笑)。

他に、ボルト付きのワイドトレッドスペーサと言う選択も有りますが、純正の16インチホイールだと、裏にボルトの「逃げ」が無いので、25mm以上のスペーサを選ぶか、あるいは純正ハブボルトを切断すると言う事になりますね。
ネジ屋さんの話では、ボルトの長さは径と同じだけあり、噛んでいれば大丈夫なように作ってあるそうですが、ちょっと残り10mmとか15mmしか残らないボルトカットは心配です。
また、ボルトを切ってしまうと、もしもフィーリングが悪くて、スペーサを外そうと思っても後戻りできません。

逆に、ボルトをカットしなくて良い25mm以上となると、今度はオフセットがリアだと40以下となり、フェンダーと干渉するでしょう。
よって、最低でもツメ折り、もしくはフェンダーの加工が必要となりますね。

余談ですが、 結構何の躊躇もなくツメを折る人が多いようですが、このページで何度も言っていますが、純正品がやっていることには全て意味が有ります。
ツメは、フェンダーの剛性を上げるためにわざと付けてあるのです。これを取ってしまうと、ちょっと強くフェンダーを手で押すと、ボコッとフェンダーが凹む可能性が有りますし、走行中に力が掛かり、凹むこともあるそうです。

まあ、S2000ではあまり無いのかもしれませんが、フェンダーの面積の広いミニバン等では、実際にあるそうです。
S2000では凹まずとも、やはりフェンダーが「コ」の字だった物が、単なる板になるので、微妙に変形したりチリがズレやすくなる可能性は有りますね。 (気にしない人は気にしないでしょうが)
よって、ツメ折りにもそれなりの覚悟が必要かと。

こうなると、非常に選択肢が小さくなり、5mm以下のスペーサを入れるのが一番、手軽で安心で安いですね。
気に入らなければ、外せば完全に元通りです。 査定も下がりません(笑)。

さて、詳しい理屈とインプレは別途どこかに書く予定ですが、その効果は絶大で、5mmでも強烈に効きます。


ただ 次に、もしもロールセンターが地面の中にあるような車では、下図のようにトレッドを広げると逆にロールセンターが下がってしまいます。
これも分かりやすくするために、極端な例としています。

まあ、このケースはキャンバーが0ですが、実際にS2000のアライメント調整でこのようなセッティングが出来るどうかは分かりません。
ただ、このようなセッティングの車は作ってはいけないでしょうね。


厳密に言うと、トレッドを広げるとロアアームのレバー比が変わったのと似た効果が生じるので、バネレートが微妙に下がることになりますが、5mm以下ならば、それによる車高ダウンは無視できる程度だと思います。
バネレートにもよると思いますが、もしも車高が下がったと思ったら、上げてやればオッケーですね。
(トレッドや足廻りの詳しい話は、また改めて書く予定です。)


以上、ロールセンターを上げるためのもう一つの方法でした。
 

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