ドリフトとグリップはどっちが速いのか?


昔は夜な夜な走り屋さんたちの間で繰り広げられていたテーマ。

「ドリフト走法とグリップ走法はどっちが速いのか?」


少しセンセーショナルなテーマですが、今回は私の考えを書いてみましょう。
これについては、昔に撮影した動画でもあまり上手く答えられていませんでしたしね。

私はドライビングの最適解を追求することは、高い山の登山に良く似ていると考えています。
(ここで言う最適解とは、最も速い運転のことです)

これがどういう意味かと言うと、山の頂上に登るための経路は一つではないのです。
特に私は“ドライビングの最適解“という山の頂上に向かうためには、大きく分けて二通りのアプローチがあると考えています。
そのアプローチこそが、ドリフトアプローチとグリップアプローチなのです。

一般に、スポーツ走行の心得がある人ならばきっとこう言うことでしょう。
「グリップ走法の方が速いに決まっている」
と。

ですが、例えば町でゆっくり交差点を曲がっているおばちゃんたちだって、グリップ走法をしていますよね?
では あれは速いのですか? 逆に少しだけタイヤを滑らせる、速いドリフト走法もあります。
なのでグリップ走法ならばいつも必ず速いわけではありません。

今回の問いは水泳に例えると、以下のような質問に似ています。
「クロール泳法とバタフライ泳法ではどっちが速いのか?」

確かに世界記録はクロール泳法の方が速いですが、トップレベルバラフライ選手が下手なクロール選手よりも速いことはザラなのです。
つまりこの問いへの答えはケースバイケースなのですよ。

それでは私と一緒にドライビングという山の頂(いただき)を目指して考えてみましょう。
(因みに今回は後輪駆動車のケースとし、かつ私の経験の都合からFR車の話に限定させて貰いますね)

例えるならこの山を登るための東側ルートがグリップ走法であり、西側ルートがドリフト走法でなのす。



図1 ドライビングの最適解

東側から登るなら、一番麓(ふもと)は街乗りのようなタイヤの限界の遙か手前のコーナリングとなるでしょう。
逆に西側ルートの麓は、D1グランプリの様な逆ハンドルを当てて白煙をモクモク吐く派手なドリフト走法となるでしょうか。
知っての通り、「速さ」という点に於いてはどちらも最適解からは遠い物です。

ではグリップルートからコーナリングの速さを求めていくとどうなるのでしょうか?
当然スピードを上げていくとある所でタイヤのグリップが遠心力に負けて外側に滑り出すでしょう。
逆にドリフトルートからコーナリングの速さを求めていくと、リアタイヤのスライド量を徐々に減らしていき、カウンターステアの量も減っていくでしょう。
そして最後にはハンドルが内側に向いて曲がるようになり、更にアクセル開度を下げるとやがてリアタイヤが完全にグリップしてしまうはずです。

つまりグリップルートから登ると最も速いコーナリングはタイヤが滑るギリギリの場所となり、ドリフトルートから登ると最も速いのはタイヤが少しだけ滑る場所になるはずです。
一見、二つの違う場所に到達したように見えますが、これらって一体何が異なるのでしょうか?

”恐らくどちらのルートから登っても、最も速い走り方は結局似たような物になる”だろうというのが、私の考えです。

ではこの走り方をドリフト走法と呼ぶべきなのかグリップ走法と呼ぶべきなのか、どちらでしょうか?
ドリフトとグリップの言葉の定義が曖昧な以上、私はどちらでも良いと思っています。

さて、ここで終わっては月並みすぎて面白くありませんよね。
次に、このドリフト走法とグリップ走法とドライビングの最適解とトラクションステアの関係について書いてみましょう。

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