視線とマーフィーの法則


さて、ヒントというか、コツを一つ追加しましょうか。

舵角を一定にして走るためには、視線の先が非常に重要だということに、遅かれ早かれ気づくでしょう。
舵角を一定にしているにもかかわらず、なぜか見ている方向に車は行こうとするのです。
つまり、「コーナーの外側に行ってはいけない」と外側をずっと見ていると車は膨らむし、「イン側をぶつけないように」とイン側をずっと見ていると、車はイン側に向かって行ったりします。
これは何とも不思議な話ですねぇ。

でもまあ、この話は良く聞きますかね? 雑誌なんかにもよく書いてある話ですから。
私は同じ話を書くのが嫌いなので(笑)、ここではもう少し、視線について科学的な話でもしてみましょうか。

まず初めに理解しないといけない事は、スポーツにおいては人間の脳は「NOTを理解できない」という事を知っておいて下さい。
ん?ちょっと難しいかな??

これはあるゴルフプレーヤーが言っていた話なんですが、右に池があるから、「右に打ってはいけない」、と強く念じて思うほど、なぜか玉は池の方向に飛んで行ったりするらしいです。
また他の例だと野球では、監督がバッターに「低目の球には手を出すな」と指示すると、バッターはなぜか低目の球ばっかり打ってしまったりする事があるらしいです。
んー、何とも不思議な話ですねぇ…。

でもこれらを解決する方法が有るのを知っていますか?? とても簡単です。
ゴルフの例ならば、「左を狙って打とう」と思えば良いだけだし、バッターの例ならば、監督が「高めの球を狙って打て」と指示すれば選手はその通りに出来るそうです。

つまりスポーツ時において人間の脳は、「NOT」、つまり、「やってはいけない事」を理解するのが苦手なのです。
だから「右に打ってはいけない」ではなく、「左を狙おう」、と思うとうまくいくのです。

更に付け加えるなら、例えば道に幅50cmの線を書いて、その中を歩けと言われたら普通は歩けますよね??
ところが、地上100mの高さに幅50cmのレールをぶら下げて、そこを歩けと言われると多くの人はフラついたり、落っこちそうな気がしますね??
これも地上の時と比べて、「落ちてはいけない!」と強く思うためでしょう。
やってはいけない事を強く思えば思うほど、地上の時は何ともなかった50cmの幅が強敵になるわけです。

余談ですが私はこれはスポーツだけではないと考えています。
極端な話、人生の方向性もそんな気がします(笑)。
「こういう仕事だけは絶対にしない」と学生時代から強く思っていると、大人になって結局その仕事をする羽目になっている人をたびたび見かけます。
はたまた、「こういう女とだけは付き合わない」、「こういう男とだけは付き合わない」、なんてのも同様な気がします(笑)。

昔から、言霊(ことだま)って言いますよね? だから普段から、「やってはいけない事」ではなく、「やるべき事」を考えて言葉に出して行くと、不思議とそっちの方向に行けたりするものです。


これに関連して面白い話を一つ。
「マーフィーの法則」って知っていますか??
まあ、昔流行ったんですが。
例えば、「洗車した後に限って雨が降る。」とかー、「折りたたみ傘を持っていかなかった日に限って雨が降る」とかー、「ダサい服を着ているときに限って、好きな人に偶然会う」とかー、「検便の日に限って、屁しか出ない」とか。
まあ半分ジョークなんですが、こんな法則、何となく共感するところも有りません?(笑)

その中でも特に有名なものがあって、「ジャムを塗った食パンを絨毯(じゅうたん)に落とすと、必ずジャムを塗った面が下になって落ちる。」というものが有ります(笑)。

まあ普通は笑って終わるところですが、海外には面白い学者がいて、本当にこれを実験した人がいるんですよ。
本来ならば、1/2となるはずのジャムを塗った面が下になる確率は、1/2より大きくなるんじゃないか?と、本気で実験して調べたんです。
方法は、多くの学生のバイトを集めて、実際に食パンを何度も落として統計を取ったんです。
結果はー、、、もちろん1/2でした。
結局、ジャムを塗った面が下になると絨毯が汚れて、その強い印象が残るから、いつもそのようになっている気がするのではないか?みたいな考え方が、このマーフィーの法則の一般的な説明となって解決しているようですね。

でも私は別の説を考えています(笑)。
それがこの、「脳はNOTを理解できない。」によるものだという説です。
食パンを絨毯に落とすときに、「アッ!」と思いますよね?その時に、絶対にジャムを塗った面が下になってはいけない!!と強く思う事で、手元がおかしな動作をしてそっち向きに落ちる確率を上げているんじゃないか? と思っています。(だから、どっちを下にして落としてもいいと思っている学生の実験では、差が出なかったんでしょう)

上記の様な他のマーフィーの法則たちも、もしかしたらそのような脳の仕様が働いているのではないかな?って思っています。
まあ、そんなバカな説考える人は私しかいないでしょうが(笑)。

とにかく、、、運転においても「やってはいけない事」をあまり強く念じてはいけません。
「やるべきこと」の方向の事を、強く念じてみてください。
視線の方向はその基本です。

「ここでアクセルを抜いてはいけない」ではなく、「ここはアクセルを全開で行こう」。
「ブレーキを強く踏みすぎてはいけない」ではなく、「ブレーキは優しく踏もう」。

この様に、ポジティブな考え方にしてみてください。 地味ですが、とても効果があります。

初めの練習で、「曲がれと強く念じると不思議とアクセルコントロールをする」という話も、実はこういった根拠が有って書いていたんです。

本気で速くなりたい人へ」の項の、荷重曲げや、トラクションステア効果を出す技術などは、極端な話、出来ているか出来ていないかのどちらかで、中途半端に出来ているという事はあまりありません。 
しかし「ガチで速くなる練習方法」に書くことは、ゴールは「ハンドルを動かさない」など非常に単純ですが、そこに至るまではべらぼうに多くのステップが有って、総合力が必要です。 何一つ欠けていても出来ません。
例えば、視線一つ間違っていても出来ないのです。

ま、ちょっと長くなっちゃいましたが、視線の先、意識してみてください。
きっと上達を助けるでしょう。


最後にたまには車とは関係のない余談を。
せっかく今、受験シーズンですからね(あ、この原稿は1月に書かれたものです)。
10代の人も読んでくれているみたいなので、まあもしこのページを見てる事があったら、試験も同じだと思っておいてください。

「この学校に落ちてはいけない」ではなく、「この学校に受かるんだ」。
「この問題は解けないとまずい」ではなく、「この問題を解くんだ」。
「遅刻したらまずい」ではなく、「この時間までに行くんだ」。

こんな感じです。 きっと良い方向に行くでしょう。

ま、余計なお世話でしょうが、私が10代の頃、こういう事を教えてくれる大人が居なかったんでねっ。



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