第二話 プラクティス


三矢峠、T公園パーキング:

ギャラリー: 「おー、来たぞ。あれがプロジェクトDじゃないのか??」
ギャラリー: 「オイオイ、ワゴン4台連れかよ。何入ってるんだ??」

福田弟: 「何者なんなんですか、プロジェクトDって? 金持ってそーですね。」

大林: 「さあ。素人の走り屋らしいけど、今まで一度も負けたことがないらしいよ。」

福田弟: 「え?? 一度も? そんなの嘘じゃないんですか?」

大林: 「いや、全ての対戦記録をホームページに公開してるらしいよ。」

福田弟: 「へー、えげつないなぁ。」

東山: 「しかし、派手なFDだなぁー。何だ、あのオーバーフェンダーは…」

山田: 「GTウィングにカナードも派手だねー。」

東山: 「噂ではあのFD、400馬力近く出てるって話だよ。」

大林: 「よ、400馬力!?」

福田弟: 「そんなの反則じゃないですかー。 山田さん、勝負になるんですか???」

山田: 「うーん・・・。 無理じゃない??(笑)」



涼介: 「藤原、啓介、それじゃあいつも通りコースを走って、ビデオとのイメージのズレを修正して来るんだ。 しっかりとコースを頭に叩き込んでこい!」

啓介、拓海: 「コクリ」

「バーーーーン」「パーーーーン」。「ギャルルルル」「グォーーーー」。


涼介: 「どうだ、このコースは?」

啓介: 「どうもこうもねえよ。 この時間じゃあ、一般車が居るから危ねえ危ねえ。所々で猿がギャラリーしてるし…」

史浩: 「まあ、7時でこの道は閉まっちまうからな。仕方ないだろう。」

涼介: 「地元の連中も、同じ条件で走ってるんだ。 贅沢言うな。」

啓介: 「でも、思ってたよりも高速コースだなぁ。 スピードがかなり乗る。 峠というより、ワインディングに近いんじゃないのか??」

史浩: 「まあ、ワインディングと峠を足して2で割ったような道かもな。」

松本: 「ラリーの、ターマックの道よりも高速ステージですねえ。」

啓介: 「でも、中盤のインフィールドに入ると、高低差のある逆バンクの付いたS字や、クランクコーナーもあって、いやらしいレイアウトだなあ 。 でも、藤原はこういう所上手いんだよな…

拓海: 「うん。遅いところだと、60キロ切りますね。」

啓介: 「高速コーナーもあるし、色んなレイアウトを凝縮したようなコースだな。」

史浩: 「あと、上り、下りといっても始めと最後だけで、後はほとんど平地って言うか、細かい高低差しかないよなぁ…」

啓介: 「確かに。 思ったんだけど、このコース、上りの方がスピードのらねえか?」

拓海: 「あ、俺もそれ思いました。 上りの方が、ブレーキ厳しい…」

涼介: 「確かにその通りだ。 上りは、直線の後のドンツキヘアピンが多い。 下りは、逆にヘアピンで減速した後の直線だ。 当然、上りの方がスピードが乗るし、ブレーキがシビアだ 。」

啓介: 「…。」

松本: 「この道、側溝も有る事は有るんですけど、浅くてとてもタイヤを引っ掛けられるようなものではないですねぇ。」

拓海: 「…。」

史浩: 「何だか色んな意味で、いつもと違う遠征だなぁ。 まあ、涼介のやることだ。 何か意味があるんだろう。」

FDのメカニック: 「それにしても、セッティングしにくいコースですよ。 高速域に合わせると、低速域でギア比が合わない。 逆に、インフィールドに合わせると、直線でシフトチェンジの回数が増えるし、5速でも吹け切りますね 。」

啓介: 「それと、足回りだな。 高速域に合わせるとこの車高と硬さでちょうどいいんだが、インフィールドでは、減速帯や高低差のあるコーナーで跳ねまくる 。 さっきリップ擦っちまったよ・・・。」

松本: 「あと、中盤にグラベルラリーのジャンピングポイントみたいな丘が有りますよねえ?」

啓介: 「ああ、あれかあ。 あそこは、この足じゃあ話にならねぇーよ、硬すぎて。 着地した時に挙動が思いっきり乱れる。 アクセル全く踏めねーよ 。」

啓介: 「フー。まったく、セッティングに悩まされるコースだよ。」

涼介: 「お前達だけでできるか?」

啓介: 「いつまでも、アニキに頼ってばっかりいられねーからな。できる所までやってみる!!」

拓海: 「コクリ。」


啓介: 「とりあえず、バネレートと減衰下げてくれ。 前後共だ。 後、車高を前後とも20mm上げてくれ。 少しでも、ストロークを稼ぎたいんだ。」

拓海: 「松本さん、俺のほうも車高上げてください。 これじゃあ、ジャンピングポイントでリップ擦っちゃうんで。。。」

涼介: 「…。 啓介も藤原も少しずつだがセッティング技術も成長しているようだな。 とにかく、自分でセッティングを考える事が大事なんだ 。 このコースを選んだ理由の一つは、セッティングを自分で考えるのに向いているコースでもあるからなんだ。」

史浩: 「なるほど…。」

涼介: 「しかしこのコースで、全てのコーナーにセッティングを合わせるのは、ハッキリ言って無理だ。 どこかで妥協した、オールラウンドなセッティングにせざるをえない 。 向こうは、どうセッティングしてくるのか楽しみだな。」


解説: 更に、涼介もセッティングに加わり、FDとハチロクのセッティングは煮詰められていった。

涼介: 「よし、とりあえずこのセッティングで、いつも通り80%で5本、行ってこい!!」

啓介、拓海: 「コクリ。」


「バーーーーン」「パーーーーン」。「ギャルルルル」「グォーーーー」。

解説: こうしてプラクティスは、夜7時ギリギリまで続いた。


続く・・・

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