デフを物理する


さて、久しぶりに新しい項を作ってみました。 アンケートで要望が多かったディファレンシャルギアについてです。

モータースポーツの世界では良く、「LSDが不可欠だ」なんて言われていますね。
ではLSDとは一体何をするもので、どんな効果があるのか?? まあこのHPを読んでいる方なら知っていることも多いと思いますが、改めておさらいから始めてみましょう。

ちなみにディファレンシャルギヤ、略して”デフ”ってそもそも何なのか知っているでしょうか?
まあ調べると分かりますが、デフとは“差動装置”のことで、自動車の駆動輪には必ず付いています。
これは何のための装置かというと、左右輪の回転差を吸収するための装置ですね。

自動車は直進している時には左右のタイヤは同じ回転数で回っていますが、曲がっている時には左右で回転数が異なるのです。 図1を見てみて下さい。



図1 左右輪の回転差

この様に自動車がコーナーを曲がっている時には、外側のタイヤは大きな円を描き、内側のタイヤは小さな円を描くことになります。すると当然、左右のタイヤが通る距離は変わりますね?
つまりデフがないと、左右輪が常に同じ回転数で回ってしまうので、どちらかのタイヤ(或いは両方)が滑って曲がることになるため都合が悪いわけです。まあ、必要だから付いているんですね。

デフの作動原理については、YouTubeなどに分かりやすい動画がいつくか載っています。
その中から一つ紹介しておきますね。




さて、この様にデフは偉大な発明で自動車には欠かせないものですが、デフには欠点というか、ある特徴が有ります。
それは片方のタイヤが空転してしまうと、もう片方のタイヤには一切駆動力が伝わらないというものです。
つまり、空転しているタイヤが一秒間に10回転していても、もう片方のタイヤはゼロ回転になることを許容してしまうわけです。この様なデフは、一般に“オープンデフ”と呼ばれています。まあ、左右の回転差が無制限ってことですね。
ファミリーカーなどの普通の車に付いているのは、このオープンデフです。

元々車をスムーズに曲げるために発明されたデフですが、上記の理由により低μの悪路やスポーツ走行においては万能でないとされていますね。
μ路の話は取り敢えずここでは触れないとして、スポーツ走行時にコーナーから加速しながら脱出する時に、駆動輪のイン側のタイヤの荷重が抜けて空転してしまうことが有ります。 これはいわゆる、“インリフト”と呼ばれる状態ですね。
そうなるとオープンデフでは、グリップの有る外側のタイヤに駆動力が掛からず全ての駆動力が空転するイン側に逃げてしまうので、トラクションが掛からない、加速できない、というのが雑誌やカタログなどに一般に書かれている説明でしょう。

そこでこの問題を解決するために回転差を制限するデフ、“リミテッド・スリップ・デファレンシャル” (差動制限装置)、通称LSDが発明されました。 これはデフに大きな駆動力や制動力が掛かるとデフをロック(左右を直結に近く)するもので、LSDを導入すればイン側のタイヤがたとえ宙に浮いたとしても、外側のタイヤに駆動力が掛かります。
よってトラクションが良くなる=加速できる、という説明が一般的でしょう。


これはとても分かりやすい説明ですが、逆にこれ以上詳しい説明や体系的な説明というのはあまり見ませんかねぇ。

「LSDを入れるとトラクションが上がる」

この一言で終わりがちですが、実際にLSDがもたらす効果はそれだけではありません。 実はLSDというのは、ハンドリングや車の挙動自体を大きく変えるものなんです。 では、一つ一つ細かくLSDの役割を見て行きましょう。

続く……


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