摩擦円は円なのか?
さて、ここから先は少し新しいステップに行きます。
前項では摩擦円の話をしましたが、これって何年前に考えられたものなんでしょうかねぇ?
当たり前のように良く使われているこの摩擦円を使った説明。
これまたちょっと、疑ってみましょう。
私がまず始めに思った疑問は次のような物です。
「タイヤの縦方向のグリップ(摩擦力)と横方向のグリップは、果たして同じなのかな?」
例えば、消しゴムの様な正方形の接地面を持つ四角いゴムの塊が有ったとします。
これを糸で引っ張るとすると、縦方向に引っ張ってもでも横方向に引っ張っても、滑り出す摩擦力は同じでしょう。
まあ、当たり前ですね。下図のようになります。
図1 四角いゴムの摩擦力
ただ、タイヤはどうなんでしょうか??
良くタイヤの銘柄によって、縦グリップを重視したとか、横グリップが上がったとか言う話を聞きますねぇ。
しかしまず始めに、タイヤと言うのは設計上も、構造上も、
横方向よりも縦方向のグリップを大きく作ってあるのです。
それらは、ワイヤーの巻く方向や、トレッドのパターン等です。
よって、一般のタイヤは縦グリップの方が、横グリップよりも大きくなっている訳です。
図2 タイヤを横方向に引っ張る例
図2 タイヤを縦方向に引っ張る例
つまり、摩擦円は円にはならない訳です。
私はこれを、摩擦楕円(まさつだえん)と勝手に名付けて呼んでいます。
それは、下図の様なイメージです。
図3 摩擦楕円のイメージ
摩擦楕円では、この図の赤い円の中に入っていれば、タイヤは滑らない事になりますね。
つまりこのモデルでは、摩擦円の点
Aを超えた、点
Bでもタイヤは滑らない事になります。
何となくイメージがわきましたか??
そして次に、タイヤに荷重を掛けた時のタイヤの接地面の形の変化を考えてみます。
まず、縦方向に荷重を掛けて引っ張ったような時、例えばブレーキング時の前輪や、加速時の後輪ですね。
それは、強調して描くと下図のようになりますね。
図4 縦にタイヤが潰れるイメージ
これは、タイヤが潰れるというイメージだと思います。
トレッドの中心をそのままに、接地面が円状に大きく広がって行くイメージです。
この形は摩擦力が高そうですね。
次に、コーナリング時の外輪などの、横方向に荷重を掛けた状態で横に引っ張ったイメージです。
これも、強調して描くと下図の様になりますね。
図5 横にタイヤが潰れるイメージ
タイヤ屋さんのHPなどに行くと、コーナリング時の接地面の画像が乗っていますね。
これは、タイヤが潰れると言うよりはヨレるというイメージですかね。
まず、トレッドのブロックは横方向にヨレますね。
そして、タイヤのサイドウォールもヨレるため、トレッドの外側に荷重が集中しやすくなり、一番摩擦力の高いトレッド面を少し外す様になりそうです。
これでは、摩擦力が落ちそうですねぇ。
よって、実際の車にタイヤを付けた状態では、より縦グリップの方が横グリップよりも大きくなる訳です。
つまり、図3の摩擦楕円はより縦長になることになりますね。
そして、同じ荷重をかけても、タイヤが縦に潰れるのと横にヨレるのとでは、この摩擦楕円の大きさが大きく異なるでしょう。
それは、タイヤのグリップ自体が大きく変わることを意味します。
この事実は、ドライビングにも大きなヒントを与えます。
トップページに書いた通り、車の性能を出す事とは、タイヤの性能とエンジンの性能を出す事です。
その
タイヤという部品が、横グリップよりも縦グリップの方が高いのならば、
車を曲げる力としても、横方向のグリップだけはなく、ぜひ縦方向のグリップも利用したいものです。
もしもそんな方法を考えられれば、より高いコーナリングフォースを発生させる事が可能となるでしょう。
そうなれば、結果としてコーナリング速度が上がることになりますね。
このタイヤを縦に潰して、さらに縦グリップを利用して車を曲げられるかどうかが、タイヤの性能を最大限に出すために非常に重要なポイントとなります。
さて、次は更に新たな領域に(笑)。
続く・・・
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