ホイールの取り付け方でチューンする


皆さんこんにちは。久しぶりの更新となりますね。

車の世界には「チューニング」という言葉がありますが、皆さんはその本来の意味って知っていますか?
昔から車の部品を交換したり付け足したりすること、つまり改造することをチューニングと呼ぶ事が多かったですが、チューニングの本来の意味は

「調律(チョウリツ)」

です。
良くピアノやギターなどの「楽器のチューニング」という言葉を使うと思いますが、これらは正に調律することを指しますよね。
例えばギターの弦やピアノの鍵盤を取り替えることはチューニングとは言いませんので(笑)。

なのでこの言葉を車に当てはめれば、純正部品のまま調整を行うことが本来の意味でのチューニングとなるでしょう。
例えばコンプリートエンジンを作って売っているショップなどでは、純正のピストンやコンロッドをたくさん持っていて、それらの中から重量が揃っているものを選んでエンジンを組むチューニングをやっていることが多いでしょう。

この場合はエンジンをバラしても何も社外パーツが入っていない上に、加工もされていないので「ダマされた」と言っている人を見たことがありますが、これもれっきとしたチューニングです。
エンジンの場合は他にも燃焼室の容積合わせをやることも多いですね。
何れにしても、社外部品は入れていません。

またこれは本当がどうかは判りませんが、NA2型のNSXのタイプRのサスペンションは、メーカーが多くのバネの中から誤差が少ないものを揃えて組んであるといった話も聞いたことがあります。
もし本当にメーカーがそこまでやっているとしたら、凄い話ですね。

ですがエンジンのチューニングは自分でやることはほぼ不可能に近いし、お店に頼むとメチャクチャお金が掛かりますね。
しかしながら中には、自分で出来て、殆どお金が掛からないチューニングも存在しています。

例えばタイヤの空気圧を精密に調整して一番良い状態にすることなどは、無料で出来るチューニングでしょう。
他にもアライメントをキッチリ取ることも、定義上は改造ではなくチューニングとなりますね。
お店でアライメントを取るのには結構お金が掛かりますが(大体2万円前後)、その効果はとても高いものです。

チューニングという言葉は、車の世界に於いては「調律する」よりも「揃える」というニュアンスが近いかと思います。
ピストンの重量にしても、サスペンションのバネレートにしても、空気圧にしてもアライメントにしても、「揃える」という表現が最もしっくり来ると思われます。

そこで今回は、私が比較的最近発見した安価に出来る、工具さえ持っていれば無料で出来るチューニングを紹介してみようと思います。

車をお持ちの皆さんなら、きっとタイヤを交換した経験があると思います。
例えば冬用タイヤに変えたり、或いは磨り減ってきたために交換したり。
もちろん私も何度もありました。そこで時々感じたことが、交換するお店によって(同じ銘柄のタイヤであっても)「タイヤが転がるフィーリングが違う」というものでした。

始めはタイヤに取り付けるウェイトの誤差の違いなのかな?と思っていましたが、どうやらそうではないことに気づきました。
ウェイトはちゃんとしたお店なら、それ程誤差はないと思いますので。

そして私が考察した結果は、「ホイールの取り付け方ではないか?」でした。
なぜなら大手の店などでタイヤを取り付ける時にエアインパクトを使うお店はフィーリングが悪く、逆に手締めのお店はフィーリングが良いことが多かったからです。

一応初心者にもわかるように解説すると、タイヤのホイールを外す時にはインパクトレンチを使っても何の問題もありませんが、ホイールを取り付ける時にはボルトの「締め付けトルク」というものを守る必要があります。

なので個人がDIYでタイヤを取り付ける時には「電動インパクトレンチは使わないように」とされていますが、大きなお店などではエアインパクトレンチの設定トルクを弱くして締めることが結構あります。なぜって、その方が全然楽ですからね。
(因みにYouTube動画でもDIYでその様な取り付けをしている方を良く見かけます)

なのでエアインパクトで弱いトルクで軽く締めて、そしてリフトから車を降ろしてトルクレンチで本締めをするというお店が意外と多いのではないでしょうか?(私は何度か見ています)

これは乱暴に言うと、ナットを「二段階」に分けて締めていることになりますね。
一回目はエアインパクトレンチで仮締めして、そして車を着地させてトルクレンチで本締めという二段階です。

ですがホイールをハブに取り付ける時に理想なのは、「全てのナットを同時に締めること」なんだそうです。
つまり4穴ならば4つ同時に、5穴ならば5つ同時に締めるのが理想です。
ですがそんな工具は存在しないため、1つづつナットを締めていくことになります。

そしてナットを締める順番は、対角線上に締めていくことが常識とされていますね。



図1 ホイールナットの締め付け順

これは全てのナットを同時に締めることは出来なくとも、出来るだけ全体に均等に圧力が掛かるようにするためです。
この手法はホイールだけ限りませんし、車の世界に限った話でもないでしょう。
出来るだけナットは全体が均等になるように締めていくことが理想なのです。

しかしながら上記の二段階に分けるだけの締め方では、やはり偏りが出る可能性があると私は考察しています。
特に一度エアインパクトレンチで軽く締めただけで、車をリフトから降ろすと車重がモロにホイールに掛かってしまいます。
まだナットがキッチリ締まっていないので、重力によってホイールとハブの間に微妙な圧力のズレが出ることが容易に想像出来ますね。
その状態でトルクレンチで本締めしてしまうと、ホイールとハブ面圧が均等に掛かっていない状態になる可能性があるのですよ。それでは微少なブレが出たり、しっかりセンターが出なかったりすることがあるのではないでしょうか?

これが何となく転がるフィーリングが悪い原因ではないかと私は考えました。


さて、では上記を前提としてホイールとハブ面の面圧をチューニングしてみましょう。
やり方はとても簡単です。

まず必要な工具は、ジャッキとクロスレンチとトルクレンチだけです。車を止めるために輪留めもあれば尚良いでしょう。
クロスレンチの代わりに車載工具に入っている物でも出来ますが、安いし(1000円程度)便利なので一つくらい持っておいても良いでしょう。
ジャッキも車載工具に入っていると思いますが、油圧ジャッキがあると疲れが大分減りますのでこれも持っておいても良いと思います。
後はトルクレンチですね。これは車載工具には入っていないので買う必要がありますが、4000円程度からとそれ程高くはありません。そしてトルクレンチだけは本チューニングの必須工具となります。
トルクレンチはDIY程度であれば、安価なものでも十分でしょう。

必要工具購入の参考(Amazon アフィリエイトリンク):

油圧ジャッキ (私が使用しているジャッキはこちらです。国産ながら安価でお勧めです)
クロスレンチ
トルクレンチ (私が使用しているトルクレンチはこちらです。少し高めですが、ロックリング式でトルクに設定が簡単でお勧めです)
輪留め (ブロックなどでも良い)

では工具が揃ったところで具体的なやり方です。
と言ってもとても簡単ですが、まずは車をジャッキアップしてホイールのナットを全て緩めます。ナットは完全に外す必要はありません。ホイールがグラグラする程度まで緩めれば十分です。

そして次にナットを図1の要領で対角線上に弱く締めていき、一巡したら同じ順番でもう少し強く締めていきます。
もしホイールが回転してしまうのなら、後輪ならサイドブレーキで止めておきましょう。
前輪はギアを入れておくとそれ程動かなくなると思います。
後輪駆動車の前輪は回ってしまいますが、まあ、まずはホイールが回る状態で締められる程度の弱さでOKです。

因みに私は大体3巡ほどさせます。
そしてある程度強く締まったら、今度はトルクレンチを使って締めていきます。
これも一発で締めるのではなく、徐々にトルクを上げて締めていきます。
例えば規定トルクが100Nmだとしたら、まずは70Nmから締めていき、次に85Nm、そして最後に100Nmで締める要領です。

もしタイヤが回ってしまうようだったら、ジャッキを少しだけ下ろしてタイヤが地面にギリギリ接地して荷重が掛からないようにし、タイヤが回るのを抑えるのが良いでしょう。

そして規定トルクまで締め終えたら、ジャッキから車体を下ろします。
同じ事を四輪に対して行います。
ええ、たったこれだけです。初心者でもきっと1時間も掛からないでしょう。

作業が終わったら試しに走ってみてください。
体感出来るかどうかは人によりますが、意外と体感出来ると思いますよ。何というか、タイヤがビターッと転がる感じです。
逆に取り付けたお店が元から丁寧に取り付けていたら、体感出来ないかも知れませんが……。

そんなわけで今回は、ほぼ無料で出来るチューニングの第一弾でした。
車は機械なのに、手間をかけるとちゃんと応えてくれるところが面白いですね。

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