インプレッサ VS. インテグラ



史裕:「下りは、ゲートからゲートまでで先にゴールした方が勝ちということでいいですね?」

山田:「うい。」

史裕:「スタートはヨーイドン方式で。」

山田:「うん。オッケーだよ。」

史裕:「じゃあ、インテグラは左車線に入ってください。」

山田:「オッケー。てか、四駆ターボ相手じゃスタート位置関係無いけどね。」

大林:「山田さーん。期待しないで待ってます!!」

山田:「コラ。」


史裕:「それじゃあカウントするぞー!!」
史裕:「5、4、3、2、1、ゴーーーー!!!!」


スタートで4駆ダッシュを決める拓海。 遅れをとる山田。

山田:「おー、やっぱ速えーよ、インプは。」

ギャラリー:「スタートで完全にインプが離した。これで最後までちぎって終わりじゃないのか??」
ギャラリー:「しかもドライバーは、あのハチロクのドライバーだろ?」
ギャラリー:「ああ、抜かれるなんて考えられない。このまま逃げ切りだろ。それ以外の終わり方なんて有るのか??」


ジェットコースターのような強烈な加速。 序盤の下りでインテグラを離すインプレッサ。

山田:「…。俺はそのインプには特別な思い入れがあるんだよ。懐かしいなぁ。まだ街乗り位にしか車を使っていなかった頃、友達の結婚式の帰りに家まで送ってもらった車がそのインプだ。VerWだけどな。
その時下りでいきなり全開にアクセル踏まれてなー。マジちびるかと思った。こんな車や世界が有るんだぁーって。
それからだよ、車に吸い寄せられるように興味が出てきたのは。」

山田:「 今から思えば、ドッカンターボの車で直線踏まれただけなんだけどな。そらすげー衝撃だった。車に対する見方を変えてくれた車なんだよ。 まさかその数年後に俺もこんな事やってるとはな。フフ。」


啓介:「アニキ、今度は高速セクションは最後だからスリップなんて使えないだろ?? インプに藤原の運転だ。追い抜きはとても考えられない。このまま終わっちまうんじゃないのか??」

涼介:「そんなことは相手も計算ずくだろう。このまま離されたんじゃあ余りに策が無さ過ぎる。」
涼介:「俺は、車のチューニングの中で、第一のチューニングをエンジン、第二のチューニングをシャーシを含めた足廻り、そして空力を第三のチューニングとして考えている。現在のレーシングカーでは、もっぱらこの空力で差が出ると言われているのさ。そして今回のドライバーは、峠でその空力を使ってくる相手だ。だが、あのドライバーの本当の恐ろしさはそれだけじゃあない。」

啓介:「…。」


ブレーキングドリフトで始めの左コーナーに入っていく拓海。ワンハンドステアでの練習の成果を生かし、ほぼゼロカウンターで立ち上がる。

ギャラリー:「おー、すげー4駆ドリフトー!!」

山田:「ん〜…。ドリフトねー。」
山田:「さてと、一個目の左か。それじゃあ一発FFの速さを見せてやるかぁ!!」

「カーーーーーン」

ギャラリー:「ウォー、どこでブレーキ踏むんだ、あのインテ!!」

コーナーのアールが始まる直前、インテのブレーキランプが一瞬だけチカッと点灯する。

ギャラリー:「うぉー、凄い突っ込み!!」

「カクン」

ギャラリー:「!!!」

「ガーーーーーー。」

ギャラリー:「なっ、何だ今のコーナリングは!! 入り口でカクンって、枝が折れるように向きが変わった。」
ギャラリー:「ああ、その向きのまま気づいたら次のストレートに居やがったぞ!! コーナリング速度が全く落ちなかった!!」

拓海:「!! えっ、すぐ後ろにインテが!!」

山田:「たかが200Kg、されど200Kg。この車はお前のインプよりちょうど200Kg軽いんだ。
一般に、絶対的な速さを求める上で、最も不利なレイアウトがこのFFという形式だ。構造上トラクションがかからないからパワーは上げられないし、フロントヘビーでとにかく前後重量バランスが悪い。更にフロントが重い上、駆動輪と舵を切るタイヤが同じだから、とにかくひたすらアンダーだ。
ただ一つだけ、FFのメリットをあげるならば、車重を軽く出来るということだ。ミッションとデフは一体構造だし、プロペラシャフトも無いからな。ドライバーの仕事はとにかく車の長所を引き出す事。200Kgの軽さを存分に生かすんだ。」

大林:「東山さーん、ぶっちゃけ山田さんのFFの運転ってどうなんですか??」

東山:「俺は山田さんのFFの運転はあるレベルまで達していると思うよ。ある種の究極の形だと思う。本人もFFのセッティングと運転は、ほぼ頂点近辺まで来たって言ってたからな。」

福田弟:「それで飽きちゃって、FR乗ってるんですか??」

東山:「うん。FRはまだまだ全然乗れてないって言ってるよ。でもそれが面白いらしい。」

大林:「しかし、初めてのFRがS2000とはチャレンジャーですのぉー。」

東山:「まあね。初めて飲む酒がテキーラみたいなもんだからなぁ(笑)。 昔、パワー上げたスカイラインに乗ってた俺でもS2は難しいよ、ホント。 未だに、まだまだって感じだな。」

石山:「なんせ、山田さん、俺のFD運転して、挙動がマイルドで楽だって言ってましたからねー。FDも一般にはピーキーだって言われてるのに…。」

東山:「S2が異常なんだよー。その代わりに、ひとたび乗りこなせればめっちゃ速いけどな。」

大林:「ねえねえ、それよりFFの究極のドライビングってどんなのなんですか??」

東山:「うーん。山田理論は難しい(笑)。FRをバックさせて走るのと同じって言ってた。」

大林:「ほえ? そりゃあまあ、そんな気もしますけど…。」

東山:「FFってのは、リアタイヤで曲げるんだってさ。」

大林:「ハイ、もう着いていけません。説明は後ほどー。」
 


続く・・・

戻る                次へ