もう一つのスリップストリーム
山田:「…。スリップに入れば3速までは何とか付いていけるな。だがこの先でインプは4速まで入る。仕掛けるのはここだ!!」
丘への上りコーナーへと入る拓海。曲がりながらインプのリアタイヤに荷重が乗りきる。
左の側溝にフロントタイヤを落とし全開のインテ。
4速へとシフトを叩き込む拓海。
再びターボラグを利用し、3速全開でピッタリとインテがついたその瞬間であった。
拓海:「!!!!」
インプのリアタイヤが突如トラクションを失いハーフスピンモードに陥る。
山田:「ヨシ!!」
アウトに膨らむインプ。拓海は必死でインプを立て直す。
インからインテが楽々とパスする。
ギャラリー:「オーーー!!インテがインから抜いたー。」
ギャラリー:「何だ? インプの挙動が乱れたぞ。2駆のインテは全く乱れないのに、、、インプは4駆だろ? 何でだ??」
拓海:「し、しまった!! 行かれた! 一体何が起きたんだ?? いきなりリアがスライドした。。。」
山田:「フフ、決まった。」
山田:「一週間も時間が有ったんだ。スリップについてちゃんと勉強してきたか??
スリップストリームってのは、後ろの車の空気抵抗を減らすだけではない。この速度になると、前の車のリアタイヤにリフトを起こさせる事ができるんだ。そっちのインプはGTウィングは付いていない。セダンボディーの車のCl値は、その形状上大きいんだ。
簡単に言うと、上りで荷重が乗り切ったリアタイヤのトラクションを、後ろからスリップを使って唐突に失わせる事ができるんだ!!
これはエボZのショップデモカーとのオッカケッコでも使った技さ!!
本当に決まると、ホイールスピンでエンジンにオーバーシュートを起こさせる事もできる、4駆ターボ殺しの技なんだぜ。
(作者注:あんまり教えたくなかったんだけど(笑))
この丘を上れば、下りながら一気にインフィールドに入る。ここからトンネルまで30mだ。30m離せば勝てる。」
2台はインテグラリードで丘の頂上を越える。
「プルルー」
史裕:「え?? 藤原が抜かれた??」
啓介:「なっ! 藤原がインプレッサで?? いったい何が起きたんだ。」
涼介:「…。」
大林:「オ!! 山田さん抜いたらしいですよー!!」
福田弟:「えー??今度はどんなマジック使ったんですか??」
東山:「ん〜。」
大林:「ねえ、東山さーん。 前から思ってたんですけどFFって実は速いんですかぁー?? 俺MRしか乗ってないからわからない。」
福田弟:「俺もFRしか乗ってないからわからないです。」
東山:「うーん、速いね(笑)。俺もEG6シビック時代はノーマルエンジンで首都高でGT-Rを煽れたからね。」
福田弟:「そんなことあり得るんですか??」
東山:「やっぱりとにかく軽いのが効いてるよ。ストレートで離されてもコーナーで追いつける。」
大林:「へー。やっぱりFFは軽さですか。」
東山:「うん、軽いのもそうだけど。。。FFの運転ってのは、ぶっちゃけ簡単なんだよ。悪く言えばアンダーだけど、よく言えばスタビリティーが高い。つまり雑な入力に対して、車が寛容なんだよ。
だから誰が乗ってもそこそこ速く走らせられる。特に、軽量なFFにハイパワーのエンジン載せて、機械式LSD付けてハイグリップタイヤ履けば誰が乗っても速い。ぶっちゃけ初心者でもね。」
大林:「でも山田さんは、あるレベルまではFFは簡単だけど、そこから先はいきなり難しくなるって言ってましたよ。」
東山:「その通り。あの人はいつも、始めからLSD付けてハイグリップタイヤを履くのは教育上よろしくないって言ってるよ。コジッてもそこそこごまかしが効くから、失敗に気づかなかったりするからね。その点、ストリームは失敗を許してくれないから勉強になるって(笑)。」
大林:「へー。ちなみに山田さんのインテってLSDは??」
東山:「それが入ってないんだ。機械式どころか、ビスカスすら入っていない。オープンデフなんだよ。」
福田弟:「オープンデフ?? それで曲がるんですか??」
東山:「だって考えてみなよ、ストリームにLSDなんて入ってると思う??」
大林:「そりゃ確かにそうですねえ(笑)。でもメチャ曲がってましたからねー。」
東山:「山田さんが言うには、FFにLSDは進入で失敗した時のごまかしにしか必要ないってさ。まあ、ホントにそうとは思わないけどね、俺は。」
大林:「ふーむ、インリフトしない限りLSDはただでさえ少ないパワーを食いますからねぇ。」
東山:「オ!!大林君すごい!!分かってるじゃん!!」
大林:「そりゃあ、俺の車もパワー不足だからパワー食うものには敏感なのよ。
ブツブツ。」
東山:「なるほどねー。俺のミラもやっぱりパワー食われてるんだろうなぁ。」
インテがリードのまま、2台は丘を超え、バトルはインフィールドセクションへと入っていく。
続く・・・
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