たまにはチューニングの話でも。


してみましょうか。

今回は、グリップの向こう側に書いた、コーナリング中のコントロール性の悪い車、特にリアタイヤがグリップとスライドの両極端に行きやすい、スイートスポットの狭い車を買った場合の、車の作り方の話でも書いてみましょう 。


突然ですが、 良く「モータースポーツに近道は無い」なんて言葉を聞くと思います。
まあ、どんなスポーツにも近道なんて無いですねぇ。 そんな物があれば、誰も苦労しないです。

ただ、「モータースポーツに近道は無い」と言う言葉は、私は実際にはその考は半分だけ正しいと思います。
どういう意味かと言うと、「モータースポーツに近道は無い」ものの、そこには「ひたすら多くの遠回りが有るから」です。
そして、多くの人がその遠回りをしている様な気がします。

例えば、始めに難しい車を選んだり、或いはせっかく良く出来ているノーマルの車を、わざわざいじって変な車にして、変な練習をすれば当然遠回りとなります。
逆に言えば、単に変な事さえしなければ、それが最短の道で遠回りにはならないはずですね。

さて、説教っぽい話はこの辺にして、取り敢えず今回はグリップの向こう側に書いた練習がしやすい車の話を書いて見ます。
始めに練習に勧めた車に書いた通り、最近の車、特に2000年以降に設計されたFF車であれば、まず何もしなくても良いでしょう。 と言うか、しない方が良いでしょう。
これらの車は、何もしなくても全て、トラクションステア効果を出せると思います。

しかしながら、、、古い車では、車種によっては難しいかもしれません。
と言うか、経験上難しい物が多いです。

でわ「 最近の車と、古い車で、走行性能上何が一番違うのか?」と言うと、私はボディー剛性と電子制御だと考えています。
まあ今回は、電子制御の話は置いておいて、もう片方の剛性の話をします。


グリップの向こう側(実践編)に、「 剛性の低い古い車は、リアタイヤがグリップとスライドの両極端に行きやすく、トラクションステア効果を出し続けるのが難しい物が多い」、と書きましたね。

剛性と言っても色々ありますが、特に車体の「ねじれ剛性」の低い車は、とてもコントロールが難しいです。
とっても乱暴に言うと、車のボディー(正確にはシャシー)は、バネの一種です。
つまり曲がったりねじれたりする金属な訳ですね。

しかし、サスペンションのバネにはダンパー(ショックアブソーバ)が付いているのに対し、ボディーにはダンパーが付いていません(笑)。
つまり、ボディーが曲がったりねじれたりしても、それを減衰させる装置が無い訳です。
そうなると、ねじれたボディーが戻る時に、「ボヨン」っと唐突に戻らないように、ドライバーが運転技術で何とかしてやらないといけません。

ボヨンっと戻ると、急激な荷重変動が起きて、タイヤがズバッと滑るなどの不安定な挙動の原因となります。
よって、ドライバーの技術でボディーのねじれを減衰させるために、タイヤがどこで滑るのか、逆にどこでスライドが戻るのか、その時のタイヤの荷重やグリップと、それによるボディーをねじらせる力、 ねじれたボディーが戻ろうとする力、更にサスペンションの動きやタイヤのタワミを予測して、ハンドルを適切なタイミング、スピード、量で、合わせ込むように戻してあげなければいけません。

これはどちらかと言うと感覚的な世界で、口で説明するのは中々難しい感じです。
(例えるなら、「カックンブレーキ」をしないように、止まる寸前にブレーキをスッと抜いてやるのにイメージは似ています。)
まして、更にサスペンションのダンパーがヘタっていたりすると、私も上手く出来ません(笑)。

よって、始めに基礎的な練習をする時には、こんなクソ難しい(失礼!)不確定要素は一つでも減らしたい物です。
それこそ、上達のために、余計な遠回りをしないために。

練習に勧めた車に、2000年以降の剛性の高い車を選び、資金が有れば新品のダンパーへ交換する事を勧めたのはこのためです。
しかし、練習する車が2000年以前の剛性の低い車の人もいると思います。
今回はそんな車でトラクションステア効果を出しやすくする、チューニングの話をしてみます。


グリップの向こう側(実践編)に、 剛性が低い車では、トラクションステア効果を得るのが難しく、それはリアタイヤのスイートスポットが狭いからだと言うような事を書きましたね。
しかしリアタイヤを最適な状態にスライドさせ続けにくい原因の多くは、実はフロントタイヤの方にあると考えています。
なぜならば、トラクションステア効果は前輪が路面にキッチリ接地していて、縦にグリップしながらスピンしている必要が有りますが、ボディーがねじれてしまうと サスペンションがヘタっていなくても、前輪の内輪が浮いてしまいやすいからです。
いわゆる、インリフト状態になってしまう訳ですね。

そうなると、前輪はもう車体を引っ張る力が無くなり、トラクションステア効果も当然得られません。
特に今回は、LSDは禁止ですから、そうなりますね。

内輪が空転すると外輪に動力が伝わらず、失速し、結果横Gも下がるので、しばらくすると内輪が接地しますねぇ。
そうすると、また唐突に駆動力が掛かり、トラクションステア効果も復活して車体を引っ張る、という動きを短時間の間に繰り返すので、リアタイヤがスライドした りグリップしたりを繰り返し、中々綺麗にスライドさせ続けられないのです。

特に最適な姿勢を作っても駆動輪がインリフトしてしまうなんて言うのは、運転技術と言うよりも車の問題です。
(もちろん、純正よりもグリップの高いタイヤを履いても、そうなりやすいでしょう。)
駆動輪をインリフトさせて曲げるセッティングなんてのは、カート位の物で、車では絶対にNGだと言うのが私の考えです。


そこで、剛性の低いFF車でインリフトを感じる、あるいはトラクションステア効果で綺麗にスライドを続けられないと思う人にお勧めなのが、「フロントフェンダー内補強」です。

これは、ボディーのねじれを抑える効果が有り、今までに行った棒による補強の中で一番効果が有りました。
感想を一言で言うと、 ボディーがねじれない事により、フロントの内輪が常に接地していて、トラクションが上がる感じです。
理屈は、昔の車はエンジンルームが長く平たく柔らかく、キャビンは固めの物が多いので、どうしてもそこを境に車体がねじれる様な気がします。
よって、それらを棒でガッチリ繋いじゃえば、ねじれない、と言うのが私の理解です。
タワーバーなどの横方向の棒では、これは解決できませんからねっ。

ここの補強は、FFだけでなく前輪が駆動している全ての車、つまり4駆にも非常に有効です。
(実際に、確か前のモデルのインプレッサでは、純正でここに補強バーを追加したモデルが出た記憶が有ります。)

インリフトするからと言って、ロールを減らそうとして足廻りを変えたりLSDを入れたりすると、色んなところが変わり過ぎて、逆におかしくなってハマるケースが多 くなります。
よって、取り あえずフルノーマルでここだけ補強する事からやってみる事をお勧めします。
トラクションの掛かり方が良くなり、 車種にもよりますが、きっと必要にして十分だと思います。
(低年式の車では、変わり過ぎるくらいかもしれません)

あと、ボディ補強にももちろんデメリットは有るので、読んでいない人はこちらを読んでおいてください。
(ボディー剛性の話は、また詳しく書く予定です)

私はチューニングに絶対反対と言う訳ではありませんが、本気で運転が上手くなりたい人は、車をいじる時にはキチンと理解して、本当に必要を感じた所だけを行う事をお勧めします。


以上、 今回は、古い車で練習する時にトラクションステア効果を出しやすくするための、チューニング(正確には改造ですけど)の話でした。
 

続く…。

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