図1 サスペンションのストロークイメージ
特に私の車は、純正の16インチホイールなので、オフセットは65mmとかなり大きめ。
車高を下げると、1Gの状態でストローク状態にある様な物なので、かなりそれが目立ちます。
よって、トレッドを広げるという考えではなく、車高を下げた事により、狭くなったトレッドを元に戻してみようと思ったわけです。
ここでちょっと、トレッドの幅とハンドリング特性の一般論についてザックリまとめてみましょう。
リアのトレッドを広げると、ハンドルを切った時の初期の回頭性、初期の舵の効きが良くなります。
特に、ターンイン等の荷重が前に掛かっている時には顕著ですね。
逆に、コーナーに入った後の旋回区間ではアンダーステア方向になります。 リアの限界が上がった感じですかね。
アクセルオンでは、舵角が増えて、プッシングアンダーと感じる方向です。
レーシングカートや、フォーミュラカーを見ると、極端にリアのトレッドの方が広いですね。
市販車でも、後輪駆動車は大体リアのトレッドの方が広くなっています。
図2 カートやフォーミュラカー、後輪駆動車のトレッドバランス。 初期が効き、後半アンダー方向。
ちなみに、最近のF1はフロントのトレッドが広い傾向で、またフロントタイヤも太くキャンバーも相当大きめですねぇ。
恐らく最近のF1は、空力によるリアのダウンフォースが相当強くなっているので、曲がるためにフロントタイヤのグリップ力が必要なのと、高速コーナーが一番タイムが稼げるので、そこを重視して作ったらそうなってしまったのではないか、と考えています。
その代りにオンボードビデオを見ていると、素人目ですが、低速のへピンなどではハンドルの初期の効きがダルい気がします。
今でもカートやF1やFポンよりも下のクラスのフォーミュラカーでは、やはり図2の様にフロントのトレッドは狭めの様です。
実際にカートのハンドルの初期は、激烈に良く効きます。
さて、今度は
逆にリアのトレッドを狭くすると、ハンドルの初期の舵の効きはダルくなります。
ヨーがすぐに立ち上がらずに、クイックさは落ちますね。 舵角も、大きくなりがちです。
逆にコーナーの旋回区間では、アクセルオンでもオーバーステア方向に行きます。 深舵も良く効きますね。
市販車では、アクセルオンでアンダーステア特性になりやすいFF車では、このようなセッティングが多いようです。
FFのターンインでは、初期はフロントの重量が重いので勝手に前荷重になり、自然と舵の効きは強くなるので、フロントの荷重が抜けた奥の効きの方を重視するという判断なの
だと思います。
図3 FF車などのトレッドバランス。 初期がダルく、後半曲がる方向。
まあ、何故そうなるかの理論は、結構難しいのでまたどこかで…。
さて、これらを考慮して、S2000のセッティングを考えてみました。
ちなみにS2000って、ハンドルの初期が意外と効かないと思いません?
例えば、同じFRレイアウトの、マツダのロードスター(NA型)何かは抜群に初期が良く効くと思いました。
ホンダ車だと、2000年以降に販売された、殆どのFF車は初期が良く効くと思いました。
(まあ、ホンダ車はFFが殆どですが…。)
それと比べると、S2000は初期が意外と効かず、奥で切り足したり、アクセルを踏むと、とても曲がって行くイメージです。
特に初期型はアンダーオーバーな特性だと言われていますね。 私もそう思いました。
タイヤの鳴き方も、コーナーの初期はフロントタイヤの方が強く鳴き、後半はリアタイヤの方が強く鳴きましたかねぇ。
実際にスピンするケースは、コーナーの前半よりも、アクセルオンの中盤以降の方が多いのでは??
(FF車だとスピンは圧倒的に前半が多いですね。)
また個人的に、私は初期が強いハンドリングが好きです。
S2000は、見た目は初期が非常に効きそうだと思いましたが、初めて乗った時に意外と効かないと思ったのを覚えています。
その分、奥での効きは申し分ないですが。
これらの実際の走行フィーリングと、見た目と、一般的な法則より、もう少しリアのトレッドを広げた方が良いのでは?と考えてた訳です。
上記の法則から、
初期がもう少し強く効いて、その後は旋回性よりもトラクションを高める方向ですね。
アンダーオーバーの逆の、オーバーアンダーってイメージです。
またその方が、コーナーの入口からリアタイヤを積極的に滑らせていくという、この時点での私の運転スタイルともマッチすると考えました。
そんなわけで、リアのワイドトレッド化を行ったわけですが、1500円でロールセンターをアジャストするの項にも書きましたが、純正ホイールで安価にトレッドを広げる選択肢というのは、実質5mmのワイドトレッドスペーサしか有りません。
たまたま友人が持っていたので、ちょっと借りて早速実験です。
これでリアのオフセットが60となり、トレッドが左右5mmずつ広がった事になります。 見た目は、意外と変わりましたかね。
さて、それでは取り付けて走ってみた感想を一言で言うと、「純正でこのオフセットで良かったのではないか?」という程バッチリ決まってしまった感じです。
細かい減衰力調整やアライメントの調整など、今までの苦労は一体何だったんだ?と言う程です。
始めに書いた、「何かが足りない」というのは正にこれでした。
微妙に納得いっていなかった、ハンドリングのネガな部分が全部解決してしまった感じです。
少し具体的に書くと、まずハンドルの初期はやはり理論通りに良くなりました。
今までに比較的苦手だった、ターンイン時などの初期のヨーの立ち上がりが良くなった感じです。
そして、旋回区間ではバッチリトラクションが掛かり、更にロール剛性が上がった感じでロールは減り、かと言って上下方向の固さは変わりません。
跳ねる事は無いし、乗り心地も変わりません。
というより、むしろスタビが柔らかくなった感じで(まあ実際になっているんですが(後述))、乗り心地は良くなる方向でしょう。
リアのサブフレームのヨレも感じにくくなり、アクセルオンでのアライメント(特にトー)変化も少なく、弱アンダーステア特性でガンガン踏んで行けるようになりました。
中低速コーナーでは、入口からかなり横に向けて滑らせて入って行っても安心感が有り、もはや初期型S2000特有のピーキーさは殆ど感じません。
スライド時にも、細かいカウンターステアやソーイングが殆ど必要無くなりました。
実際に助手席に乗っている友人に、「ソーイングがかなり減りましたねー」と言われた程です。
ただ逆に、プッシングアンダーが出る方向なので、初期に有る程度向きを変える必要が有るでしょう。
まあ
アンダー方向と言っても、ちょっとアクセルを踏み込んでやれば、パワーオーバーに持って行ける程度ですが。
ただ私はもうちょっとアクセルオンで曲がって欲しかったので、現時点でターンインがオーバー方向、アクセルオンでアンダー方向なので、減衰力で学ぶロール剛性配分と操舵特性に書いた理論通り、フロントの減衰力を1クリック固くしたら、旋回中のプッシングアンダーも大分緩和されました。
それでも、アクセルオンでは若干アンダー方向ですが、スライドさせて運転するにはこれ位でも良いと思いましたかね。
今までくコツコツといじって来て、ここまで来てようやく「S2000を振り回している」と言える運転が出来るようになりました。
それにしても、
たかが片側5mmのワイドトレッド化でこんなに変わるとは、想像以上だったのでビックリです。
これは、足廻りのリセッティングが必要な程の変化ですね。
とにかく、減衰力にしても、トレッドの前後バランスにしても、何もかも理論通りに決まるので気持ちいいですね(笑)。
さて、ちょっと長くなったので、それではトレッドを広げた事によって一体車の何が変わったのか?
次回は少しだけ理論的な事を考えてみましょうか。
続く…。