初期型S2000のピーキーさを、緩和するには?
さて、
どうして初期型は、限界域でピーキーなの?に書いた通り、ピーキーな初期型を、コントロールしやすくする方法を考えて見ます。
私は
このピーキーさを消すセッティングには、大きく別けて二つのアプローチが有ると思います。
1、 サスペンションをストロークさせない
2、 サスペンションの伸び側(リバンプ)の減衰力を上げる。
1は、コロンブスの卵みたいな発想ですね。
バンプ時のトー変化量が大きすぎるなら、バンプさせなければ良いんです。
そうすれば、一定のトーで、滑った時のスリップアングルの変化も少ないはずです。
ストロークしなければ、アライメントが一定なので、タイヤのラバーグリップで走るイメージで、実際にコントロール性は良くなります。
具体的には、ベタベタに車高が下がるローダウンサスや、車高調でも、プリロードを思いっきり掛けて自由長を無くせばこうなりますね。
ただ、バンプしないと言う事は、1Gの状態から縮まないので、きちっとリアを粘らせるには、アライメント調整で、始めにリアのトーをかなり入れておく必要が有ります。
1Gの状態で、トーインにすると言うことは、直進安定性が上がる代わりに、加速や最高速ではロスになりますね。
また、ストロークさせないと言う事は、当然路面の追従性は悪いし、せっかくのダブルウィッシュボーンのサスペンションが、リジットサスのようになり、メカニカルグリップではなく、タイヤのラバーグリップだけで走るイメージになります。
もちろん、ストロークしなければ、凹凸では跳ねますね。 着地も乱れるでしょう。
ただそれでも、グリップの高いタイヤを履けばS2000のパッケージの良さと合いまり、路面がいい所では速いようです。
2は、性能を下げずに、限界域を使いやすくする方法だと思っています。
バネが縮むとき、つまりバンプ時にトーが大きく入ることは、何も悪いことではなく、トラクションを上げ、限界も上がるので、そちら側は使いたいわけです。
ただ、問題は
バネが縮む時ではなく、伸びる時です。
滑る時に、ズバッと急激にバネが伸びるので、リアのスライドが唐突になるわけです。
よって、伸びるときには、ゆっくりと伸びるようにしてやれば、コントロール性は上がるはずですね。
後期型の、スタビとバネのレートを下げているのも、ゆっくり伸びさせる手段の一つですね。(ロール量が同じならば)
さて、ここで純正のサスペンションの話をちょっとしてみます。
純正のサスペンションは、良くできていると何度も書いていますが、長く乗っていると欠点も何となく見つかってきます。
まず第一に、純正品の割にはダンパーがヘタるのが早いですかね。
特に私の場合、リアの左の、伸び側の減衰力の低下を顕著に感じました。 道路は、基本的に左寄りの方が路面が悪いですからね。
運転の仕方もあるのでしょうが、私の場合、2万キロ持ちませんでしたねぇ。 まあ中古で買ったので、本当の新品の味は知りませんが、トータルで4万キロ強ってところでヘタりました。
さて、ちなみに、ダンパー(ショックアブソーバー)は、何を減衰するものなのでしょうか??
当然バネですよね。
しかしながら、意外と忘れがちなのが、サスペンション以外の、もう一つのバネである、
スタビライザー(アンチロールバー)です。
そして、初期型のスタビは非常に太く、バネレートが高いものです。
当然、ダンパーはスタビを減衰することも計算されて作られています。
しかしながら、私は、スタビのレートに対し、少しダンパーの減衰力が足りない気がします。
特にそれを感じるのが、コーナリングが終わる際に、ロールのお釣りをもらって一発で収束しないう時。
そして、アクセルオンで、大き目のスリップアングルでスライド状態になった時に、「ズーッ」と綺麗に滑らず、「ボッコンボッコン」と言った具合に滑り、サスペンションが沈んで伸びて(タイヤは、滑って、グリップして)を繰り返して綺麗に滑らない時です。
ただ、ここで後期型の様に、スタビやバネのレートを下げるとロールが増え、それでは限界が下がってしまうので、他の手段を考えてみます。
私の出した答えの一つは、
「リアの伸び側の減衰を上げてやることです。」
そうすることにより、バネレートはそのままに、ゆっくりとサスペンションを伸ばすことができます。 これで、トーが戻るのが緩やかになり、スライド時の唐突感は軽減されるはずです。
縮み側の減衰は、上げ過ぎるとトーインになり限界が上がった状態になるまでに、時間がかかるので(いわゆるロールスピードが落ちる)、こちらはあまり上げたくないわけです。
そうすれば、ストロークも確保でき、ストロークさせて、トーインによるグリップアップと、限界域や、スライド時のコントロール性の、おいしいとこ取りができるはずです。
伸縮別調整ができるダンバーでしたら、伸び側を思い切って上げてみるといいと思います。
オーリンズ 車高調整式サスペンションのインプレッション
にも書きましたが、例えばOHLINSのダンパーは、始めからそういうセッティングになっています。
ちなみに
メーカーが、後期型でなぜこのようなアプローチを選択しなかったかと言うと、恐らくこれ以上減衰力を上げると、足が硬くなりすぎて、乗り心地が悪化するからだと思います。
いくら伸び側の減衰力だけを強くしても、凹凸がある道で、凸でバネが縮み、強い伸び側の減衰力で、バネが伸びる前に次の凸が来ると、バネが伸びる時間がなくて跳ねるし、乗り心地は悪くなります。
ちなみにそれらを改善しようとしたものが、社外品なら、例えばOHLINSならPCVやDFV、TEINならM.S.Vなどの、複数バルブを持つシステムでしょう。
ただ、さすがにメーカーが純正で、複数バルブを持つような、これらのダンパーを作るのは、やはりコストや、O/Hの周期的に難しかったのだと思います。 まあ、当たり前ですね。
それともう一つ、これらの減衰力のセッテングだけを行っても、後期型のコントロール性と同じにはなりません。
トー変化だけでなく、ロールセンターを下げたり、ブッシュを大きくしたり、アンチスクォートを小さくしたりといった物で、総合的にコントロール性を出しているようです。
ただ、初期型の限界域でのコントロール性を上げるには、2の伸び側の減衰力を上げる方法は、副作用が少なく、効果的だと思います。
1と違い、トーも1G状態であまり入れる必要がないため、加速や最高速も犠牲になりません。
また、ストロークも確保されるので、ダブルウィッシュボーンを生かした走りができ、メカニカルグリップも高くなります。
一応、これが私の出した、初期型のコントロール性を上げるための、答えの1つです。
まあ、1つのアイディアとして、参考まで…。
余談ですが、普通の車は、車高を下げたり硬いバネやダンパーをを入れると、一般に限界域での挙動がピーキーになります。
ただS2000に限って言えば、車高を下げたり、足を硬くした方が、限界域でのコントロール性が上がることがあるわけですね。
これもS2000には、他の車の常識が通じない一つの例ですね。
以上
Back
Top