センターデフの役割

さて、それでは早速センターデフの話に入りましょう。

四輪駆動車の種類には、フルタイム4WDとパートタイム4WDがあるのはいいですね？
フルタイム四駆は常に四輪駆動で、パートタイム四駆はコンピューター制御や手動によって二駆になったり四駆になったりするものです。
第二世代以降のGT-R、ランエボ、インプレッサSTI（SUBARU WRX STIを含む。以下まとめてインプレッサと呼びます）の中では、GT-Rだけがフルタイム4WDではありません。
逆に言えば、ランエボやインプレッサをはじめ、レガシーやフォレスター、ギャランフォルティス、レジェンドなんかはフルタイム4WDですね。

そしてこれら、フルタイム4WDは基本的にセンターデフを持ちます。まあ他にも四駆の車種は有ると思いますが、センターデフの有無や構造まで調べるのが面倒いのでここでは省略しますね。
FITの様な一般向けFF車の、雪国仕様の4WDモデルなんかは、フルタイムではないものも有るようです。
（これらは逆にセンターデフを持たないものもが多でしょう）

さて、ではセンターデフというのは何のために付いているのでしょうか？
今まで書いてきた”デフを物理する”では、二輪駆動というかFR車のデフやLSDについてでしたね。
これは駆動輪の左右の回転差を吸収したり、逆に制限するものでした。

センターデフというのは、この左右が前後になったものです。つまり、前後の駆動輪の回転差を吸収したり制限したりするためについているわけですね。
そしてセンターデフといえば、普通はセンターLSDのことを指します。市販車のノーマル状態では、センターデフが付いているのに、それが二輪駆動車で言うところのオープンデフになっていることは、普通はありません。
（ちなみに前回書いたターマックギアと言うのは、簡単に言うならこのセンターデフをオープンデフ状態、つまり回転差を制限しないものにするための部品です）

そしてフルタイム4WDに使われているセンターデフは、基本はビスカスカップリング方式、略してビスカスデフですね。
電子制御ではないセンターデフは、まあ殆どがビスカスだと思って良いと思います。スバルの四駆はレガシーやフォレスターをはじめ、STI以外のインプレッサも全てこれです。ランエボではエボⅠ～Ⅵまでがこれですね。

ビスカスデフと言うのは、簡単に言えばオートマミッションのように密閉されたオイルを使った構造で前後の回転差を制限するものです。オイルを介しているので、マイルドでナチュラルなフィーリングになるのが特徴ですね。また基本的にメンテナンスフリーです。
ではこのビスカスセンターデフは何のために付いているのか？　といえば、当然前後輪の回転差を制限するためですが、何のために制限するかは今までの項を読めば分かりますね？

二輪駆動車の駆動輪にLSDを付ける理由は、オープンデフだとイン側のタイヤの荷重が抜けたり浮くなどした時に、エンジンの駆動力が全て空転しているイン側に抜けるため、それを防いで外側のタイヤに駆動力を伝えることが目的でしたね？　
まあ他にも、今まで書いたようにLSDはハンドリングや挙動に影響を与えますが、主たる目的はこれです。

そして四輪駆動では、これが前後になっただけの話です。
つまりセンターデフが付いていなかったりオープンデフの様になっていると、前輪か後輪のどちらかが空転した時にエンジンの駆動力が全てその空転している方に抜けてしまうのです。これでは四駆にした意味も半減ですねぇ……。

元々は、悪路でスタック（どこかのタイヤが空転して動けなくなる）した時に抜け出すためには、このセンターデフは不可欠でした。またラリーのような公道を使う競技では、ターマック路でもどこかのタイヤが砂利を踏むこともあれば、グラベルやスノーロードも有りますからね。
前輪か後輪のどちらかが滑って空転した時に、トラクションが掛からなくなってしまっては元も子もありません。
またそれがサーキットのような舗装路であっても、エンジンのパワーを上げて行くとどこかの荷重が抜けたタイヤが空転することが有るわけです。
まあこの辺の理屈は、FRのLSDと同じですね。ハイパワー車に於いては、このセンターデフ（LSD）というシステムはとても有効な、トラクションを稼ぐ手段なのです。

この様に簡単に言えば、センターデフというのは「常にトラクションを失わないため」に付いてる装置なわけです。
実際にランエボやインプレッサでは、血の気が引くような加速（笑）が体験できるはずです。あの加速はパワーが有って車重が軽いからだけでなく、”四輪駆動＋センターデフ”というシステムがあってこそのものなんですね。

そしてセンターデフが有ることによる恩恵は、どこかのタイヤが空転してもトラクションが掛かることだけではありません。
センターデフの最大の恩恵といえるのは、おそらく直進安定性でしょう。とにかく運転していて安定感が抜群なのです。
スピードを上げても、横風をもらってもフラフラすることは殆どありませんからね。これも四駆に乗ったことがある人なら、きっと体感できているでしょう。そしてこれもセンターデフのおかげなのです。

ではなぜセンターデフがあると安定するのか？

これこそが、最もと言って良いほどに重要なことなのです。
それほど難しくないと思うので、FRのLSDの項を参考にして、少し考えてみて下さいね。

続く……

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