図1 ロールのモデル
図1は非常にシンプルなモデルです。 アームも有りませんしね。
フレームに直にバネが付いていて、その下に直にタイヤが付いています。
実際の車はもう少し複雑ですが、足廻りの構造などは車によりまちまちですし、正確にモデルを作るのは大変なので、このようなシンプルなモデルで考えてみます。
ただこれは、基本的に実物の車をほぼ再現出来るモデルだと思います。
それでは図1のモデルを具体的に説明してみましょう。 車を後ろから見た図だと思って下さい。
まず、上の青い丸が車の「重心」です。
つまり、車の質量は全てここに集まっているとして計算する点です。 ここで車の質量は、mとします。
次に、下の青い丸が、ロール軸の断面です。 ロールセンターとも言いますね。
そして、ロールセンターと重心の距離をrとします。
次に、右のタイヤと左のタイヤの距離をTとします。 これはトレッドですね。
以後の計算では、この車に遠心力(横G)が掛かるとします。
遠心力による、横Gの力を、赤ベクトルのFrとします。これは、水平方向の力です。
そして、重心を引っ張る重力の力を、青ベクトルのFgとします。これは、垂直方向の力です。
また、車がロールした時のロール角をθとします。
それではこのモデルで、重心をロールさせる力(トルク)を求めてみましょう。
ここで大事な事は、車をロールさせるトルクは、図1の様に横Gと重力の力を合わせた物になると言う事です。
自動車に必要な物理学より、
トルクは回転軸と力を入れる点の距離のベクトルと、力のベクトルの外積でしたね?
つまりここでは、ロールセンターと重心との距離と、重心に掛かる回転に対する水平の力成分(図の緑のベクトル)を掛けた物です。
ロールをさせる力に横G以外に、重力が入っているのが意外かな?
図1よりロール角が0度でない限り、必ず重力もロールさせる力となる事になりますね。
この現象を分かりやすく言うなら、例えば車高調正式サスペンションで、右だけ車高を下げると車体が傾き、重心が右に移動して、より右のバネを縮める力となりますよね?
だから例えば、全長調整式の車高調で右の車高だけ5mm下がる様に調整してジャッキから降ろすと、不思議な事に実際の車高は5mm以上下がる訳です。逆に左は全く変えて無いのに上がりますね。
これは、横Gの力で車がロールすると、重力の力で更にロールが増えるのと同じ現象です。
それでは具体的に、ロールさせるトルクを計算してみましょうか。
何か高校物理の試験問題を思い出しますね(笑)。
まず車を回転させる方向の力を求めてみましょう。 これは図1の緑のベクトルですね。
これをFτとして、ロール角をθとすると、
・・・式1
となりますね。
ま、図1を見れば簡単です。
次に実際のトルクは、rとFτのベクトルの外積なので、
・・・式2
となりますね。
ま、Fτは水平の力だけにしてありますから、スカラー量として距離rと掛けるだけですね。
そして、Frは遠心力なので、
・・・式3
Fgは重力なので、
・・・式4
となりますね。
よって式2に、式3と式4をそれぞれ代入すると、重心をロールさせるトルクは、
・・・式5
となりますね。 まあ簡単ですね?
この式5のGが横G、θがロール角です。
つまりロールさせるトルクは、車重と横Gとロール角と、ロールセンターから重心までの距離で決まる事になりますね。
そしてこの式より、ロール角が大きくなるほど、ロールさせる力は横Gよりも重力が支配的になる事が判ると思います。
極端な例だと、式5より、横Gが1Gの時に45度ロールしていれば、ロールさせる力の半分は横Gで、もう半分は重力と言う事になりますね。
そしてそこから先のロールは、重力の力の方が支配的になる事になります。
まあこの話は、後で詳しく書きます。
ちょっと長くなったので、次回に続く・・・。