コントロールゾーン


さて、それでは始めに、実際にトラクションステア効果が得られているかどうかを確認するための、簡単な方法を書いてみましょう。


1、 アクセルを緩めるとアンダーステア方向となり、踏み込むとオーバーステア方向となるか。

まあこれが、CPで曲がっている時と一番違う所ですかね?
( ちなみに、この時のハンドルの舵角は同じとします。)
場合によっては、アクセルを緩めるとリアの荷重が抜けてフロントの荷重が増える方向(前荷重)に行くので、頭が入り、回転は増える事が有るかもしれませんが、車全体のコーナリング半径は膨らむ方向になります。

上手く決まる程、アクセルを踏み込んだ方がオーバーステア方向となります。
ちなみにオンボードビデオでは、R35GT-Rもこんな動きをしているように見えました。


2、 フロントタイヤのショルダー(角)が極端に減っていないか。

これは普通のCPで曲げていて、アンダーステアでフロントタイヤが滑っている運転と区別するために、見て一番判る違いです。
まあぶっちゃけ、練習に勧めた車では、タイヤの扁平率がかなり厚い上、エコタイヤやコンフォートタイヤはサイドウォール剛性が低いので、少しでも横に滑るとどうしてもタイヤがたわんでショルダーは減ります。
ただ、フロントタイヤばかりが極端に減っていると、恐らくアンダーステアによる減りの可能性が高いでしょう。

上手く出来ているとリアタイヤも荷重が乗った状態で滑っているので、リアタイヤのショルダーも減ります。
また、前輪は駆動力で縦にも滑っているため、どうしてもフロントタイヤの方がリアタイヤよりも早く減りますが、上手くできる程その差が少なくなります。


3、 船に乗っているような気分になるか(笑)。

これはちょっと感覚的な話ですが、トラクションステアで曲がっている時には、独特の感覚になります。
乗っていると、普通の車の動きとは違う、何とも形容できない不思議な感覚となります。

これはオンザレールと言った物とは全く違い、私が良く例えるのが、船やボートに乗っているのに似たイメージです。
滑りながらグリップしている感じで、且つ強烈な横Gを感じます。
これは助手席に乗っていても、そう感じるようで、船の様だと良く言われました。
(特に、タイヤが滑っていてもスピン挙動に入る気配が全く無いのが、船っぽいようです。)


4、 首が痛くなるか(笑)。

とにかくトラクションステアは、とんでもない横Gを出します。
実際にちょっと簡単なデータロガーで横Gを計ってみたんですが、3分山程の14インチの純正タイヤを履いたフルノーマルのミニバンで軽く山道を走っても、最大の横GはホンダのHPに載っているNSXの横G(1G)よりもずっと大きい、1.2Gでした。
(ちなみに同じ道を、ハイグリップタイヤを履いたS2000で友人の運転で計ったら、0.78Gでした。 つまり、S2000の1.5倍って事ですね。)
また同HPによると、一般の乗用車の横Gは0.5G程度らしいので、2倍以上の横Gが出ている事になりますね。

ノーマルシートなのもあるでしょうが、運転していて、横Gで本当に首が痛くなります。
まあ実際に痛くなるかは車やコースや人によって違うと思いますが、CPによるコーナリングとは明らかに違う横Gを感じると思います。


とまあ、確認方法は大体こんな感じですかね。


さて、この第3の曲げる力、トラクションステアですが、綺麗に決まると3に書いた様に車が本当に独特の状態になります。
これは何かの「ゾーンに入った」といったイメージで、今まで普通に走っていた車が違う領域に入った様な気分にさせられます。

運転している感覚としては、ハンドルの舵角は完全に一定で動かす必要が無く、アクセルはほぼ全開か、全開に向かうの状態。
そして自分の頭の中のイメージと車の動きが直結しているかのように感じ、コーナーを凄いスピードで曲がっているにも関わらず、ハンドルもアクセルも何の操作もしなくても、あたかも車が自分の意志を持って、勝手に私のイメージ通りのラインを1cmのズレも無く綺麗にトレースするような感覚です。

別の言い方をすれば、 あたかも道に「シュッ」と絶対に脱線しないレールが現れて、車の頭が常に道に対して同じ向きを保ち、アンダーステアもオーバーステアも出さずに勝手にレールの上を曲がって行っているような 感覚ですかねぇ。
まあ、実際にはタイヤは滑っているんですけど。

そして、その気になればアクセルの微調整だけでグリップとスライドの間を行ったり来たりする事も出来、またアンダー方向にもオーバー方向にも自在に持って行けて、ライン調整も自在にできる状態です。
これは感覚的な物なので、ちょっと言葉にするのは難しいんですけどね。

ちなみに、助手席に乗っていた友人は車の動きを、「紙に書いた線の中に、更に細い線を書いて行っているようだ」なんて、例えていました(笑)。

ちなみに私は車のこの状態を、「コントロールゾーン」と呼んでいます。
まあ、車のコントロールが最もイメージ通りに出来て、且つ車が最大の性能を発揮している領域、つまりゾーンって意味なんですけどね。
初めて出来た時は、今までに車の性能の限界だと思っていた遥か先に、更に訳のわからないコントロール出来る領域が有った、と言った感じでした。


今までに書いてきた一連の車を曲げる練習は、最終的には車をこの「コントロールゾーン」に入れる事が目的です。
それも、「出来る限り長い時間」ですね。
そしてこのコントロールゾーンには、練習に勧めた様な車ほど入れやすく、スポーツカーの様な車ほど入れるのが難しいです。 (例えば前に書いた、ストリームの映像は、このゾーンに入っています。)


まあ、練習すれば最終的にはスポーツカーでも入れられるんですけど、入れる事自体がピンポイントで難しい上に、長時間入れるのは更に難しいです。
車の限界が高いと、スピード域も当然上がりますしねっ。
よって、始めは限界の低い(と言っても実はかなり高いが)、練習に勧めたような車から始めるべきだと考えるのです。


コントロールゾーンに入った車は、4に書いた様に激烈に速く、そして何より運転していて最高に気持ちがいい物です。
それこそ、強い横Gと相まって、トランス状態になる程に(笑)。


是非、頑張って練習してみて下さい。
このゾーンは、今までの練習の先にちゃんとあります。

もしかしたら車にはこれよりも上の領域、「ゾーン」が存在するのかもしれませんが、現時点では私はこれ以上の領域を知りません。 (もしも発見する事が有ったら、また書きます(笑))

また後ほど書きますが、この「コントロールゾーン」は前輪駆動車だけでなく、後輪駆動車にも、4輪駆動車にも存在します。
最後に久しぶりに宿題(笑)。 前輪の駆動していない後輪駆動車では、どうやったら第3の曲げる力を出せるでしょう??
 

続く…。

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