第3の曲げる力


さて、いよいよ私の考えたドラテクの最後の、そして最高峰のレベルの話に入ります。

突然ですが車はなぜ曲がるのでしょうか?
自転と公転を理解する(必読)に、車にヨーが付く事により車体が回転して、曲がるというような話を書きましたね。
ではそのヨーはなぜ付くのか? と言うと、ハンドルを切るからですねぇ。
それによりフロントタイヤにスリップアングルが付き、車が自転を始める事により公転をする、つまり曲がる訳でしたね。
これは、きっと車が発明された時からの、最古の車の曲げ方でしょう。
自動車だけでなく、4輪の乗り物は全てこの方式で曲げているはずです。

この曲げ方は、CP、つまりコーナリングパワーを使った曲げ方と一般に言われているので、ここでもそう書きます。
私はこれを、「第1の曲げる力」と呼んでいます。
4WSなどのリアタイヤが曲がる物も、リアタイヤに舵角を与えることで、タイヤにスリップアングルが発生して曲がるという意味では、基本的に同じ仕組みです。

そしてこのCPを使った曲げ方は、現在でもメインに使用されていて、殆どの車は未だにこの力だけで曲がっています。
つまり車の技術がこれだけ進歩しても、この曲げ方だけは全くと言って良い程変わっていないと言う事ですねぇ。
自動車の発明以来、二百年以上も…。

さて、しかしここ20年位前から、新しい車の曲げ方、つまりヨーの作り方が登場しました。
私はそれを、「戦車方式」と呼んでいます。

ちなみに戦車って、どうして曲がるか知っていますか??
戦車やブルドーザーでもいいですが、これらのキャタピラで動いている物は、舵角が切れる事は有りません。
接地しているのは、左右2つのキャタピラだけで、4輪ではないですからね。
知っていると思いますが、これを曲げるためには左右のキャタピラの回転数を変えているだけです。

つまり、例えば左に曲がりたい時には、左のキャタピラの回転を少なくして、右を多くする訳です。
それによって、戦車やブルドーザーにはヨーが発生して曲がる訳ですね。
その気になれば、内側を完全に止めて、外側だけ回すことで、その場でクルクルと曲がる事が出来ます。
それも、車で言うグリップ状態で、です。

この戦車やブルドーザーがヨーを作る方法を、最近になって車に応用し始めた訳です。
有名な物は、例えばランエボW以降についているAYCや、第2世代のR33、R34GT-RのVスペックに付いている、アテーサET-S、更に最新のレジェンドのSH-AWD等です。

いずれも、後輪のデフの左右のトルク配分を変える事により、ヨーを作るのを補助する物ですね。
なぜ最近になってこのような物が可能になったかと言うなら、恐らくコンピュータの進歩による物でしょう。
これらは全て、電子制御が有って初めて実現できる物ですからね。
コンピュータが車に乗せられるほど小さく、安くなるまで不可能だった訳ですね。

更に最近では、ランエボ]の様に、曲げたい時にブレーキを内輪だけに軽く掛けてヨーを作る、何て凄い物も出てきましたね。
これは駆動力ではなく逆にブレーキを使っていますが、左右のタイヤの回転差を故意に作る事によりヨーを作るという理屈は、戦車方式と同じですね。

左右のタイヤの回転差を故意に作って、ヨーを作って曲げる。
私はこの戦車方式を、「第2の曲げる力」と呼んでいます。
ちなみに私は、ランエボ[は試乗車を運転した事が有りますが、独特の曲がり方だったのを覚えています。
何というか、つんのめる様な今までに経験した事のない曲がり方で、ビックリしました。
その気になれば、止まった状態でその場で戦車のようにクルクル回れるのではないか?と思ったのを覚えています(笑)。

この「第2の曲げる力」の登場により、車のコーナリング性能が、やっと一つ新しい領域に入った事は間違いないでしょう。
実際にランエボやGT-Rは、車重、パワー、タイヤのグリップを考えれば、ステージによっては、今までに有り得ないようなタイムも出ているようですしね。
この「第2の曲げる力」を手に入れたマシンは、ハンドリングのフィーリング等は取り敢えず置いておいて、少なくとも「速さ」と言う面においては、一皮剥けた様な性能のようです。

ただ私に言わせると、この「第2の曲げる力」はヨーの作り方こそ新しいものの、曲がる力、厳密に言うなら遠心力に対抗する力を、最終的にタイヤの横グリップに頼っている事は変わりません。
そして、タイヤは滑らせた方がグリップするに書いたように、タイヤの横グリップは静止摩擦係数が一番大きくなりましたね。
つまり、タイヤが滑っていない時です。
と言う事わ、、、この「第2の曲げる力」もタイヤの摩擦力、つまりグリップを超える事は出来ない訳ですねぇ。


そこで私は、それを超えた曲げる力を発生させる方法を、長い間ずっーと考えていました。
そして特に考えたのが、「タイヤの縦のグリップを何とか曲げる力に使えないか?」と言う事です。
その過程で、「タイヤのグリップを超えたグリップ力を出す(必読)」みたいな事を考えた訳です。
つまり、タイヤの縦グリップは、エンジンの力を使う事によって静止摩擦係数よりも大きな力を出せるので、もしこれを曲げる力、もっと正確に言うならば、コーナリング中に遠心力に対抗する力として使えれば、とんでもないコーナリング速度で曲がる事が出来るのではないか?と考えていました。

そして様々な理論を考えて、色んな実験(実走)をして、最終的に至った結論が、タイヤの縦グリップとエンジンによる駆動力を使った、「第3の曲げる力」です。
これは私の考える、現時点での最高の技術で、とんでもないコーナリング速度を生み出す事が出来ます。

それではこれから、この話を詳しくして行きましょう。

続く…。

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