底付きすると、なぜピーキーになるのか?
さて、ロールと荷重移動の話も、徐々に核心に迫っていきましょうか。
サスペンションは、通常はロールした時に
「底付き」しない様にセッティングしますよね?
底付きとは、バネが線間密着してしまったり、バンプラバーに当たって潰れてしまったり、バンプラバーを外しているショックに金属同士が当たってしまったりと、まあこれ以上バネが縮む事が出来ない状態の事です。(バンプラバーはわざと当ててセッティングに使う事も有りますが)
つまり、
バネ(サスペンション)が金属の棒の様になってしまう状態ですね。
一般にサスペンションが底付きすると、挙動が突然ピーキーになると言われています。
これは当たり前の様に言われていますし、実際にそうなるようですが、なぜそうなるのでしょう??
バネの役割が果たせなくなるから? それ以上縮めないから?
はたまた、それ以上ロール出来ないから? それ以上荷重移動が出来ないから?
まあ色んな説明を聞きますが、これらも含めてどうしてなのか考えてみて下さい。
底付きすると、一体何が変わるのでしょうか?
まあ実際には、フレーム等がしなったり、曲がったりするんでしょうが、ここでは車体は
完全な剛体(しなったり、変形したりしない物体)として考えてみましょう。
また、サスペンション形式に依存する複雑なジオメトリ変化も無視します。
前に、ロールセンターを軸としたロール運動は、荷重が全て移動した時にそれ以上できなくなると書きましたが、ロール運動が出来なくなるのは荷重が全部移動した時だけでは有りませんね。
そうです。
底付きしても、ロールセンターを軸としたロール運動が出来なくなります。
ここで、「ロール」の定義についてもう一度思い出してみると、ロールとは、
「ローリング (rolling) は、乗り物など前後・左右・上下が決まった物体が、前後を軸(X軸)として回転(あるいは傾斜)すること。ロール (roll)
とも。」
でした。
つまり、ロールセンターを軸としたロール運動だけでなく、「ひっくり返り運動」もある前後の軸を中心とした回転運動なので、一種のロール運動となる様ですね。
それでは
図1を見てみて下さい。
図1 底付き前後のでの、ロールセンターの変化図1のロール角θまでは普通にロールして、θで底付きするとしましょう。
すると、黒い円弧のθまでの間はロールセンターAを軸とした円運動をしますね?
ところが、底付きした途端、ロールセンターはAからBに移動してしまいます!
つまり重心の円運動は、ロールセンターB(アウト側タイヤのショルダー部)を中心とした緑の円弧で描かれた運動となる訳です。
ロールセンターがいきなり、こんなに大きく動いてしまったら、当然車の動きにも唐突な変化が起きます。
ロールセンターと重心の距離も、一気に大きくなりますしね。
つまり底付きする前と、した後では、ロール軸もロールセンターと重心の距離も全く違うロール運動になってしまう訳です。
難しい話は今回はカットしますが、これによりサスペンションが底付きすると、唐突にタイヤが滑ったり、ひっくり返り運動になったりと、ピーキーな動きになります。
よってやはり、この様な底付きするセッティングは避けるべきでしょう。
さて、今回は底付きのお話でしたが、単に「底付きしないセッティングが良い」というだけでなく、今回の項は色んな問題を投げかけています。
バネのレートや、重心とロールセンターの距離、トレッド、バネの縮むスピードなどが、最も速く曲がるためにはどのようにしたらよいのか、ちょっと考えてみて下さい。
えっと、ちょっと最近の項は難しいですかね? 最近サスペンションの項の感想が頂けないので…。
あそうそう、ロールと横Gと荷重移動のExcelの計算式は、ご要望があったので公開する予定です。
続く…。
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