車高調を導入して至高を目指す


「純正サスペンションの悲鳴が聞こえる」

これは、助手席に乗っていた友達の言葉です。

ブレーキング時に激しくダイブするノーズ、高速コーナーで激しくロールする車体、ロールやピッチングが大きく、面圧が高い状態で滑ってすぐにドロドロに溶けるタイヤ。 ヘタってダンピングしてくれない左のリアダンパー。

車を買って約1年半。
確かに、純正の足が、限界性能を出していると言えば、出しているような気がする時が来ました。
隣に乗った人は皆、「そろそろ車高調を入れた方がいいのでは?」と言いますね。
しかし、純正主義が信条の私は、せっかくの最高に気持ちがいいハンドリングバランスを崩したくなく、ブレーキパッド以外フルノーマルを貫いてきたので、社外品の足を入れる事にはかなり抵抗が有りました。

と言うのも、社外品を入れている車には何台も乗ったことが有ったのですが(と言うか周りで純正足は私だけでした)、運転させてもらったりして「速く走らせられる」と思ったことが有りましたが、「気持ちいい」と思ったことがあまり無かったからです。
それは車高調にしろローダウンサスにしろ、普通は社外品は車高を下げるので、リアのスタビのツッパリ感が何か気持ち悪いし、フロントの初期の回答性は悪いし、バネが固くて路面追従性は悪いし、アームの角度が変わりロールセンターが下がってロールの仕方が何か気持ち悪いし、、、と言った感じです。
また実際に走り比べても、純正の足は肝心の速さでも全く負けていませんでした。
(まあ、勿論ドライバーの差も有るでしょうが。)

そんなこんなで、やはり純正は良く出来ていると思ったので、純正の新品に交換しようかと思いました。
(ちなみに、左後ろのダンパーが極端にヘタっていたのは、おそらく私の運転が道の左を使い過ぎだったからでしょう。 左に寄せすぎて、凹凸の多い側溝の蓋を踏みまくったり、縁石にタイヤのサイドウォールを擦ったりしてましたから。)

しかしながら、ただ一つだけ、S2000を運転していて自分で納得できない事が有りました。
それは私の運転の仕方が、それまで乗っていた「FF車の運転と変わらない事」でした。
速い遅いは置いておいて、いわゆる「FR乗り」には全くなれていませんでした。
例えば簡単に言うと、アクセルで曲げるのではなく、ブレーキで曲げる運転と言った感じで、アクセルで姿勢を変えたり、アクセルオン時にリアタイヤを滑らせない運転です。


せっかくS2000に乗っているのに、FRレイアウトの特徴を生かした、いわゆる「FR車を振り回す運転」がとてもじゃないけど出来なかったのです。それが、ちょっと後輪駆動車乗りとしては悔しく、S2000の性能を出していない気がして悩んでいました。
また、FF車でも振り回すととても楽しいので、もしもS2000を振り回せるようになったら、どんなに楽しいだろう!と思ったことも理由の一つです。

しかし後輪駆動車の初心者にとって、車をFRらしく振り回そうとした時に、初期型の純正足はかなりの強敵だと思います。
良く私は、初めて乗るFR車がS2000というのは、初めて飲むお酒がテキーラのようなものだ、何て例えて言っていました(笑)。
同世代の一般的な、FRやMR車、例えばマツダロードスターや、RX-7、スープラやMR-S、あるいは日産のFR車等は、かなり無茶な操作をしても車が助けてくれて、何とかなってしまいますが、初期型S2000ではまずそのようなことは有りません。
初期型のS2000は操作に対して、車の反応がかなりシビアです。
特に純正足は、路面が相当良くないと振り回すのは非常に難しいでしょう。

ところが、足廻りを変えているS2000では、振り回すとまでは言わなくとも、簡単なスライドコントロールなど、それっぽい事が私にも出来るのです。
やはり、純正足で車を振り回すには、かなり高度な技術が要るのだなーっと思いました。

一般に普通の車は、純正の足が一番コントロール性もスタビリティーも良く作ってあり、車高を下げたり足を固めていくと、滑ったりした時に挙動がピーキーになる物が多いですが、初期型S2000に関して言えば逆ですね。
純正の足が非常に難しく、車高を下げたり足を固めた方が振り回す時のコントロール性が上がります。

まあ、モノやセッティングによっては限界は下がるかもしれませんが、スライドのコントロール性は上がると思います。
理由は、どうして初期型は、限界域でピーキーなの?に書いた通り、ストローク時のアライメント変化の大きさと 、減衰力の関係だと思います。
特にストロークの少ないセッティングの車は、限界が低く、タイヤのラバーグリップだけで走っている感じがするのですが、逆にスライド時のコントロール性は良いのです。
ストロークを減らせばアライメント変化、特にリアのトー変化が起きる前にタイヤが滑ってくれるので、普通の?FR車っぽくなります。
勿論その場合は、車の限界が下がる事が有りますが。

ちなみにこれは結構重要なテーマだと考えているのですが、はたしてコントロール出来ない限界の高い車と、コントロール出来る限界の低い車とではどちらが速いのか??
私の経験だと、限界が低くてもコントロール出来る車で走る方が明らかに速いですね。
まあその話は、どこかで詳しくまた。

またこれも 個人的に強く思うのですが、初期型のS2000というのは不思議な車で、どんないじり方をしても、それなりの方向性で、それなりにちゃんと走ってくれるような気がします。
今までビジュアル重視な車や、バランスの悪そうな車など、色んなセッティングのS2000に乗りましたけど、実際に走ってみると変な話、どれも「アリ」って感じです。
勿論、方向性も、癖も乗り味も全然違いますけど、その方向なりに、「アリ」なんですよ。
いわゆる他の車種で言う、「ああ、やっちまったなー(笑)」みたいな大外しが無いんです。
極端な話、安いローダウンサスでもそれなりにちゃんと走ってくれます。
車の基本設計が良いためなのか、素性が良いためか良く分かりませんが、不思議な車ですね。
まるで、不味く料理する方が難しい、食べ物の素材の様です(笑)。


さて、本題に戻りますが、1年半乗ってダンパーのヘタりがひどくなったため、足を交換することは決めていました。
ただ、オーリンズ  車高調整式サスペンションのインプレッションに書いた通り、純正の新品に行くか、思い切って車高調に行くか、かなり迷いました が、 そんな迷っている時に更に、「このタイヤの溶け方じゃあ、純正足の方が逆に危ない。運転の仕方に合わせた車高調を入れれば、タイヤを効率的に使えるから、こんなに溶けて減らずに長持ちする。」と言うお店に人の言葉にクラっときました。
今から思えば、商売上手ですが(笑)。

そこで結局冒険をして、車高調を入れて、純正のアジリティーと気持ち良さはそのままに、もう少し車を振り回せるコントロール性とスタビリティーを求めた、自分独自の「至高のハンドリング」を目指すことに決めました。
そして勿論最大の目的でもある、FRの運転が出来る事を目標としました。

ただ今でも、オーリンズ  車高調整式サスペンションのインプレやS2000の模範的なドライビングとは?等に何度も書いたように、私は純正のサスペンションはトータルの性能で、非常に良く出来ていると考えています。
ただ、ずっとFF車に乗っていた上、当時まだ腕が未熟だった私には、その性能を出しきる技術が無かっただけです。
性能を出せないと言うよりも、車を完全に支配下において、振り回してコントロールする事が出来なかった、といった表現が正確ですかね。
ちなみに純正の良さを再認識したのが、最近車高調をO/Hするために一時的に純正(それもかなりヘタった)に戻したのですが、普通に走る分にはビックリする位楽しい足だと思いました。
タイヤが滑り出してからは、若干コントロールのシビアさは有るものの、街乗りしていても楽しいので、このまま純正にしようかと思った程です(笑)。
今でも、基本的にグリップさせて走らせるのならば、純正の足は最高の足の一つだと思っています。


ちょっと 余談ですが、長年初期型のS2000に乗っている人で、極端に運転が下手な人ってあまり居ないと思いません??
周りで聞く話でも、極端に下手な人は、大体ぶつけて廃車にしたか、運転を挫折して乗り換えたりしている人が多いですねぇ。
なので、長年初期型S2000に乗っている事は、お金だとかブランドだとか希少車だとかではなく、「運転が上手い」という、ドライバーとしてはこれ以上ない最高のステータスだと思っています(笑)。

なんか今回は ちょっとブログみたいになってしまいましたが、次回からは具体的な話に入ります。

続く…

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