抜群に効くワイドトレッド化 その4
さて、
前回は5mmのフロントのワイドトレッドスペーサのハンドリングは今一だと書きましたね。
実際に、外して元に戻そうと思ったんですが、一つだけ気になる事が有りました。
それは、車高を落としてから、車庫入れなど微低速でハンドルを大きく切ったり、据え切り(止まった状態で切ること)をする時に、フロントのハブの辺りからゴリゴリ系の何とも言えない振動を感じていました。
しかし、これは車高を下げるとタイロッドの角度などが変わるため仕方が無く、Spoonなどから出ている、ゼロバンプステアブラケット等を入れないと解決しないんだろうなーと思っていました。
ところが、、、フロントにワイドトレッドスペーサを入れたら、それが嘘みたいに消えてしまったんです。
どうして消えたのかちょっと考えてみたんですが、トレッドが変わるとロールセンターも若干変わりますが、今回の症状はちょっと違う気がしました。
据え切りでもタイヤがスムーズに転がっている感じがするんですよね。
これは、明らかに
スクラブ半径が大きくなったフィーリングです。
微低速でハンドルを切った時に、いわゆる、「転がり効果」を感じるわけですね。
と言う事わ、、、車高を下げる事で、
逆に今まではスクラブ半径が狂っていたのではないか?と考えてみました。
ちなみにスクラブ半径とは、キンピング軸の延長線上と路面が交わる位置と、タイヤ中心軸と路面が交わる位置の距離の事ですが、このキーワードで検索してみると、とっても丁寧な図が付いた
解説ページが沢山出てきます。
よって同じ事を書いても無駄なので、ここではちょっと図はカットしますね。
用語が分からない人は、是非検索して、調べてみて下さい。
しかしながら、ノーマルのS2000のスクラブ半径がいくつなのかは、残念ながらデータを持っていません。
ただ、ホンダ車の多くはゼロスクラブ、つまりスクラブ半径が0近辺らしいです。
しかし
抜群に効くワイドトレッド化 その1に書いた通り、タイヤはストロークすると円運動をします。
と言う事は、、、車高を下げる事によって、スクラブ半径がノーマル状態よりもマイナス方向に行っている可能性が有るのではないか?と考えてみました。
しかしながら理論上は、車高を下げるとキンピング角も変わる可能性が有るので、どちらの要素が勝つのかは、実際に測定してみないと分かりません。
ただ、私は自分が運転をしたフィーフィングから、スクラブ半径が少しマイナス方向に行っているように感じました。
実際に
フロントに5mmのワイドトレッドスペーサを入れることで、いかにもタイロッドの角度が狂って、ステアリングラックに負担が掛かってゴリゴリいっている様なフィーリングが消えたので、これは
ちょっと外したくなくなりました。
よって、フロントのトレッドを広げる事が目的ではなく、
「スペーサを入れる事で、狂っていたスクラブ半径を元に戻してやろう」と考えた訳です。
更におまけに、フロントのインナーフェンダーとの干渉もマーカーを付けて実験をしましたが、フロントに5mmのスペーサを入れてからは干渉は無いようです。
しかし狂ったスクラブ半径を戻すためには、やはり5mmでは大きすぎると感じました。
ハンドリングが悪くなったのは、
前の項に書いた通りですが、意識して運転してみると、確かに特に微低速でハンドルを切った時などに、スクラブ半径が大きくなり過ぎた気
もしました。
ハンドリングがダルく感じたのも、これも原因かもしれません。
うーん。 ハンドルを切った時のゴリゴリ感は無くなり、ンナーフェンダーとの干渉も無くなり、これでハンドリングさえ良ければ言う事が有りません。
そこで物は試し。 次に知人に借りて、今度は
3mmのワイドトレッドスペーサを入れてみました。
理論的には、前後のトレッドバランスはリアが
10/1510=0.66% 広がったのに対し、フロントは
6/1470=0.41%
広がったことになるので、相対的にリアの広がり具合の方が大きい訳です。
これなら、ハンドリングは私好みの初期の効きが強い、スペーサ無しの時に近いと考えました。
まあ正直言うと、3mmという数字に特にこだわりは無く、5mmより薄いものは3mmしか周りに無かったんですが…。
装着して、早速試験走行。
すると、、、これは正にズバリです!!
5mmの時の嫌な所が全て消えて、かつスペーサ無しよりもいい感じです。
具体的には、ハンドリングの初期のクイックさは元に戻り、更にスペーサ無しの時よりもプッシングアンダーも消える方向で、深舵もほど良く効きます。
これでアクセルオンで、パワーオーバーに持って行くのが楽になりました。
ハンドリングは若干マイルドと言うより、スムーズになり、S2000らしい、カートっぽさはそのままで、ヨー軸の位置も「始めからこれで良かったのではないか?」と言う程ばっちり気持ちのいい位置(シフトノブの当たり)です。
ブレーキング時の安定感も、5mm程ではないですが、上がりましたかね。
正にバッチリハンドリングが決まった感じで、
「セッティングが出ている車って言うのはこういう物なんだなー」と思いました。
コントロール性も抜群で、振り回し放題です(笑)。
もうタイヤやアライメントも含め、このまま一切いじりたくないと思いました。
個人的には、フロントのトレッドを広げるのには抵抗が有りましたが、食わず嫌いはイカンですね。
更に、5mmのワイドトレッドスペーサを入れた時のメリット、つまり微低速でハンドルを切った時のゴリゴリ感や、インナーフェンダーとの干渉は、3mmでも無くなりました。
ここまで、やること全てがドンピシャ決まると気持ちがいい物ですね。
車高を下げた事を忘れるほど、微低速でもナチュラルなハンドリング。
これで、ゼロバンプステアブラケット等を入れる必要はもう感じなくなりました。
これらのパーツは、やはりブーツと干渉したりボルトが緩んだなどの話も聞くし、アライメントを取り直さないといけないので、取り付け工賃を含め結構値が張ります。
あと、やっぱりジオメトリをいじるのは
ノーマル主義から外れる気がして、避けたかったというのも正直有ります
かね。
それと比較し、ワイドトレッドスペーサなんて1500円程度と、微々たる額です。
それで同様の効果が得られるのなら、私はこれで十分ですかね。 しかも、「安全に」ですからね。
あ、勿論車高の落とし加減でこれらは変わると思います。 私の車高では、ドンピシャはまったと言う物です。
ちなみに5mmと3mmのスペーサでは、その差は僅か2mm。 左右合わせても、4mmですね。
そんな微妙な差で体感出来るのかいな?と思うかもしれませんが、S2000ってのは不思議な車で、本当にちょっとしたことで全然変わります。
私は人間センサー何てあだ名で呼ばれていますが(笑)、多分普通の人でも体感出来ると思います。
本当に、たかが2mm、されど2mmです。
ただ一つだけ問題点が…。
ワイドトレッドスペーサは、薄ければ薄いほど強度が問題となります。
5mm以上ならばまず問題は無いそうですが、3mmとなると、モノによっては割れる事が有るそうです。
特に量販店で売っているような、5穴4穴供用、PCDも多くに対応の、空洞だらけで半径の小さな物は危ないようです。
更に、
リアブレーキの注意事項に書いたように、こんなに穴だらけではブレーキローターの熱が上手くホイールに伝わってくれません。
頻繁にエア抜きする必要が有るでしょう。
よって量販店の安物はセッティング用に買って、セッティングが出たら強度の高い物を取り付ける事を強く勧めます。
数千円をケチって事故ったらバカみたいですからねぇ…。
この話は詳しくは、
パーツインプレッションに書きますね。
さて、ちなみにワイドトレッドスペーサやホイールのオフセット変更でフロントのトレッドを広げると、何故奥で良く曲がる様になり、深舵が効く様になるのでしょうか?
ちょっとだけ、簡単に説明してみます。
ワイドトレッドスペーサを入れるとホイールベースが長くなった様だと前に書きましたね。
この体感は、実際に間違いではありません。
ちょっと図を書いてみます。
図1 トレッドと舵角とホイールベースの関係
図1では、分かりやすくするために、タイヤ1本分のワイドトレッドスペーサを入れたという極端な例を仮定しています。
薄い青で塗られたタイヤが、スペーサを入れた後のタイヤの位置です。青い丸が、タイヤと路面の接地点です。
図を見れば一目瞭然ですね。 元のタイヤはスクラブ半径が0と仮定すると、青い線と緑の線の距離の分だけ、ハンドルを切った時にホイールベースが伸びる事になりますねぇ。
ただし、外輪だけです。 内輪は逆に、縮んでいますね。
ただ実際にコーナリングに影響を与えるのは、殆どが荷重が乗った外輪です。
更に更に、図の左と右を比べると、舵角が増えるほどホイールベースは伸びる事になりますね。
車を曲げる力は、簡単に言うと前輪によって車体を回転させようとするトルクによるものです。
そして、自動車に必要な物理学より、トルクとは回転の中心と力を与える位置の距離と、回転させる力のベクトルの外積でしたね。
つまり、ホイールベースが長いほど前輪から受けるトルクは大きくなる事になります。
これは車体を回転させる力、ヨーが大きくなる事を意味し、つまり良く曲がる事になります。
ただし、逆に内輪はホイールベースが小さくなるので、曲げる力は小さくなる方向ですね。
これより、内輪に荷重が乗っていると、逆に曲がらなくなりそうです。
運転で体感した、「奥で曲がる」というフィーリングは、つまり車体がロールして荷重が外に乗りきると良く曲がるというと説明が付きますし、「深舵が良く効く」というのも、舵角が増えるほどホイールベースが伸びるという事で説明がつきますね。
まあ、概ね体感した事と理論は一致している感じです。
ただ図を見れば分かる通り、内輪と外輪のホイールベースの差が大きくなる事は、タイヤの抵抗によるロスを生みそうです。
実際に5mmのスペーサを入れて運転していると、フロントタイヤを削りながら曲がっているイメージが有りました。
前項にも、「フロントタイヤにパワーを喰われている気がする」と書きましたね。
そしてこれは、皮肉な事にロールを減らすほど、つまり左右の荷重移動を減らすほどロスは大きくなるはずです。
よって、フロントのワイドトレッド化は、やり過ぎにはくれぐれも注意した方が良いでしょう。
良くフロントタイヤとリアタイヤを同じオフセットにしたり、同じサイズのタイヤにしたりするとパワー不足を感じて、ファイナルのギア比を変えたくなったり、エンジンの排気量アップをしたりしたくなる人がいる様ですが、パワーを喰われているので当然ですね。
純正のオフセットやタイヤのサイズは、その辺も考えられて設計されている訳ですから。
フロントタイヤを太くしたり、極端にワイドトレッド化して、
「アンダー出ねー。 けどタイムも出ねー。」なんて言うのは良く聞く話です(笑)。
この辺は、負のチューニングスパイラルにはまらないように注意が必要です。
まあこのフロントタイヤの話は長くなるので、後に改めて詳しく書く予定です。
さて、長く続いたワイドトレッド化の話。 本当に効果抜群です。
安直にホイールのインチアップやタイヤのサイズアップしたりするよりも、先に試してみる価値が有ると思います。
何と言っても、安くて手軽ですから…。
以上、簡単でしたが「抜群に効くワイドトレッド化」シリーズは一旦終了しますね。
次回からは、車高調O/H後のバネ変更、車高変更、アライメント変更等の話に行きます。
ところで、、、長く続けている「至高のハンドリングを追い求めて…」シリーズ。 いかがでしょうか?
私の苦労の軌跡なんですが(笑)、 面白いですかねぇ?
今後の参考のため、是非、アンケートで感想を頂けると嬉しいです!
続く…。
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