図1 普通のブレーキングのロック限界
図1は、普通にブレーキを踏んだ時のロック限界ですね。
ブレーキ踏力に対して、前輪の方が後輪よりもロック限界はかなり低くなります。
前輪がロックしても、後輪はタップリグリップを残して遊んでる訳ですね。
次に2段ブレーキです。
図2 2段ブレーキのロック限界
図2は、前荷重をかけるためのブレーキを踏んだ時の、前後のタイヤのブレーキロック限界です。
図1と比べて、前輪のロック限界が高くなり、後輪は低くなりますね。
つまり、前輪と後輪がロックする時の、ブレーキ踏力の差が小さくなる訳です。
まあ市販車はそれでもまだ、前輪が先にロックするように作ってありますが、これならば前後の両方を効率的に制動に使えそうですね。
よって当然、前荷重を作った図2の状態では、図1よりも強い力(踏力)で、ブレーキを踏んでもロックしません。
例えば、図1では10Kgのブレーキ踏力でロックしていたのが、12Kgまでロックしなくなる訳です。
よって、当然短い距離で止める事が出来ますね。
それでは、次に具体的なブレーキの踏み方について図を使って書いてみましょうか。
図3 普通のブレーキの踏み方
図3は、良く見る物ですね。
まあ正確には、短く止めるブレーキングを考える(後編)に書いた様にブレーキロック限界は速度とともに徐々に下がるのですが、ここでは分かりやすくするためにロック限界は同じ
とします。
これに対して、2段ブレーキは以下の図4の様なイメージで踏みます。
図4 2段ブレーキの踏み方
図4は分かりやすく書いてありますが、実際には前荷重を作るブレーキは非常に短時間です。
感覚的には、0.1〜0.2秒くらいかな?
当然あまり緩いブレーキを長く踏んでると、単に止まらないか、タイムロスになるだけです。
普通の蹴飛ばすブレーキが、「ガツン」だとすると、「ガ、ガツン」と言った感じですかね(笑)。
また本番のブレーキは、前荷重を作るブレーキを踏んでから一度ペダルを戻して踏むのではなく、そのまま踏み足す様に踏みます。
ここで重要な事が、前荷重を作るブレーキは軽く踏みますが、本番のブレーキは「親のカタキー!」って言う程に(笑)強く踏むように意識する事ですね。
初期に弱めに踏むと、どうしても本番のブレーキングも弱くなりがちになるので、意識して強く踏む事がコツです。
また、
2段ブレーキがしっかりと出来るようになると、ABSの効き方も変わってきます。
ABSは前後輪の回転差を見ていると前に書きましたね?
よって当然蹴飛ばす様なブレーキでは、前輪がロックする時の後輪との回転差が大きくなるので、ABSが「ガガガガガー」と言った感じで、連続的に介入すると思います。 正に全く止まらずに、前輪が滑っている感じですね。
それが、2段ブレーキが出来るようになると、「ガッガッガッ」と言った感じでABSが断続的に介入する感じになると思います。
当然制動Gも、強くなります。
ABSがこのように介入するのは、前輪がロックスレスレの時の、前後輪の回転差が少なくなるためでしょう。
そもそもABSと言うのは、短く止めるための装置ではなく、単にロックさせないための装置です。
最近のスポーツABS等は良く出来ていますが、それでもABSはタイヤがロックした時に、現在車がどれくらいのスピードで走っているのかを知るすべ
が有りません。
よって、ABSを効かせっぱなしのブレーキングは最適解ではないはずですし、実際に運転してみてもそうです。
また何よりも、2段ブレーキでは、「ABSが介入するまでの制動力」が抜群に上がります。
最適な制動力を出すためには、市販車のブレーキチューニングについて考える(後編)に書いた様にブレーキバランサーを付けたり、はたまたパッドで調整したりして、
セッティングで前輪と後輪のブレーキの効きを調整するのが王道でしょう。
しかし、この様に運転技術でもある程度は(と言うか、車によってはかなり)変える事が出来ます。
また、前後のブレーキバランスをあまりピンポイントで調整しようとすると、リアが先にロックしてスピン挙動が出たり、ABSが誤作動したりする可能性が有るので、やはり確実に前輪が先にロックする設定が良いでしょう。
(市販車がやっている事は正にこれで、当然意味が有るからやっているのでしょう)
さて、
ここで鋭い人は気付いたと思いますが、市販車のブレーキチューニングについて考える(前編)の項に書いた通り、車高を下げたり足廻りを固めて行ったりすると、より一層前輪が先にロックするようになるので、この2段ブレーキは非常に有効です。
そしてまた、ウェット路面などの滑りやすい道、低ミュー路では、フルノーマル車でも特に強力な武器になるでしょう。
どうしてそうなるかは、今までの項を見てゆっくり考えてみて下さい(笑)。
さて、今回書いた2段ブレーキの話はいかがでしたか? たかがブレーキの踏み方一つとっても、非常に奥が深いですね。
マスター出来れば、きっと今までとは違った、一回り上の強烈な制動力を出せるでしょう。
最後に参考までに、私の運転の2段ブレーキを、簡単なデータロガーで記録した物を載せておきます。
図5 データロガーで見る2段ブレーキ
図5は、横軸が時間、赤線が縦G、黄色線が横Gです。
水色の四角の中の赤線が、ちょうど2段ブレーキを使っている場所です。 結構綺麗に、図4のイメージ通りになっていますね??
今では殆ど無意識でやっていますが、データロガーで初めて自分の2段ブレーキを確認しました(笑)。
以上、今回は、短く止めるブレーキングの一つのテクニックでした。