究極の立ち上がり重視(解説編)


さて、今回はオンボード映像を使った半グリップ加速の解説をしてみましょう。
良く「動画をもっとたくさん載せて欲しい!」との要望をいただくのですが、色んな意味で中々公開しにくい物が多いので…。
でも今回はこのコーナーももう終盤だし、ちょっと多めに行ってみますかぁ。
ただ特に今回は、内容的にすぐ削除すると思うので、見たい方はサクッと見ておいてくださいね。

まず始めに、前回書いた半グリップ状態からの加速時の、一瞬のエンジン回転数と速度の「落ち」を紹介してみましょう。
車は、練習に勧めた車の一つである、トヨタの初期型イスト。 撮影は、大分昔です。
もちろん一番下の1300ccのグレードの、フルノーマル車です。 タイヤも純正です。(イストのスペックはネット等にたくさん載っていると思うので、知りたい人は調べてみて下さいね)
撮影は、助手席の人の手動撮影なので、ちょっとブレて見難いかもしれませんが、立ち上がり時のタコメータの針とスピードメータの針の一瞬の落ち、そして、エンジン音をよーく聞いてみて下さい。
ちなみにアクセルは、ずっと手前から全開ですから、アクセルコントロールでの回転数変化は有りません。

イストはオートマ車なので、タコメータの落ちは微妙ですが、スピードメータは良く見ればわかるし、エンジン音は変化が判りやすいでしょう。

イストの映像はこちら。

取りあえずイストの映像は、3つのコーナーを用意しました。 半グリップ加速が判りやすい順に3つ並んでいます。
1つ目は、確実にエンジン回転数の「落ち」がわかると思います。 2番目も3番目も、良く聞けば判るでしょう。
グリップが戻った時に、何となくクラッチを繋いだ時の様な感じがしませんか?
自分が半グリップ加速が出来ているかどうかの、参考にしてみて下さい。

余談ですけど、イストって、メッチャ速いんですねー。 この撮影で初めて攻めた運転をしましたが、コントロール性も抜群だし、ビックリしました。 これで、マニュアル車の設定が無いのが本当に惜しい…。
マニュアル車の設定があればラリーのベース車になるのに…、と思ったのでありました。


そして次に、違う車の映像です。 これも大分昔ですが、こっちは昼間だから見やすいでしょう。
この映像には、半グリップ加速だけでなく色んな物が映っているので、ちょっと解説してみましょうか。

まず車は、Vivio ビストロ。 エンジンはNAの、これまた一番下のグレードです。
ハンドルを変えてある以外はフルノーマルで、タイヤは純正相当(東洋タイヤのNP01)です。
あ、シフトインジケーターは付いていましたね。

おそらくパワーは、実測だと35馬力ってところでしょうか。 普通のNAの軽自動車ですね。
ただこの車、リアのサスペンション構造が独立式と、このクラスの中では結構凝っていて、そのためかリアのコントロール性はかなり良かったです。
ただやはり設計が古いため、ボディー剛性の低さは否めませんかね。
それと見る人が見れば判ると思いますが、この車はサスペンションのダンパーが相当ヘタっているので、スムーズに運転するにはちょっと技術が必要ですかね。

さて、それではまず始めにこの車のオーナーさんの運転です。
このオーナーさんは、長年FF車に乗っていた方なので、従来のFFのセオリー通りのタイヤを滑らさない上手い運転だと思います。
ちょっとここまでに書いてきた、タイヤを積極的に滑らせる私の変則的な運転との比較のために、紹介します。


そして次にドライバー交代。 全く同じ区間の、私の運転です。
まあこの日初めてこの車を運転した映像なので、アンダーマージン(後述)を取っていたりして今一綺麗じゃないですが、最後の左コーナーなんかは、比較的きれいにコントロールゾーンに入っています。

Vivioの映像はこちら。

さて、では私の運転の解説です。
まず10秒付近の長い右コーナーで、右に少し「カクン」と言った感じで曲がっていると思います。
これはいわゆるハンドルの「パキ切り」ではなく、ブレーキを使った荷重曲げです。
よーく見ると、ブレーキングで一瞬前荷重を作っているのが判ると思います。
あと、走り始めてすぐにカメラがズレてしまったため、ハンドルがあまり映っていませんが、良く見るとハンドルの切り方がわかると思います。 始めのコーナーではアクセルオンの後、少しだけハンドルを切り足していますが、これはロスになります。

ただいかんせん、この日初めて運転する車なので、リアがどんな動きをするかわかりません。
特に軽自動車はホイールベースが短いですからね。 唐突なスピン挙動が一番おっかないです(特に古い車は)。
よって、ブレーキングによる荷重曲げでは少し控えめに向きを変えて、絶対にスピンしない程度にリアタイヤを滑らせて、少しアンダーステアっぽい姿勢でリアタイヤを半グリップ状態に保ちます。
そうすれば、ハンドルを切り足せば曲がってくれるし、また、スピン挙動も出ません。 これが、アンダーマージンです。

その先でハンドルを少し切り足してからスキール音が出てくる頃にはアクセルは全開で、トラクションステア効果が少し効いています。
次のどんつき右は、少し上りながらのブレーキングで、スピードも乗っているので難しい所です。
ここは、アンダーステアが出やすいので、荷重曲げで思い切って横向けて、リアタイヤのグリップを最大限に使っています。
上りはリアタイヤに荷重が掛かりやすいので、この角度で入れる訳ですね。
ただ、この運転はちょっと失敗です。 リアタイヤのスライドを止めるのにちょっとロスが有るので、もうチョビットだけスライドを抑えた方が速いでしょう。

そして次の上って下る左コーナーですが、これが前回書いた、トラクションステア効果が得られにくいコーナーの例です。
下りに入る時に一瞬フロントの荷重が抜けるので、トラクションステア効果を得るのが難しいのです。
更にこの車は、ダンパーがヘタっているので減速帯の上では、あんなボヨンボヨンとした動きになってしまいます。
ダンパーがバネを減衰出来ずに、タイヤが「接地して、跳ねて」を、短時間の間に繰り返している訳です。
ここは技術でごまかすのが難しい所でした。

次の緩い右コーナーは、下ってから平地になるのでフロントに荷重が掛かりやすく、アクセル全開で行けていますね。

そして次に、最後の深めの左コーナーですね。
ここが、一番トラクションステア効果が得られやすく、コントロールゾーンに入れやすいコーナーです。
ここは入り口で荷重曲げのブレーキを踏んでから、すぐにアクセルは全開です。 スピードがあまり落ちていないと思います。
そして、、、後半もアンダーステアが全く出ていませんよね??

これがトラクションステア効果が効いていて、コントロールゾーンに入っている車の状態です。
良く見ると ハンドルの舵角が、「完全に一定」になっていると思います。
そして肝心の立ち上がりですが、エンジンの回転数が明らかに一瞬落ちているのが音で判ると思います。
Vivioは マニュアル車なので、判りやすいですね。 ここが、正にコントロールゾーンからの半グリップ加速です。
カタログ値で40馬力そこそこのフルノーマルの車に、2人合わせて150Kg近い大人が乗っているにしては、意外と速いと思いません??

実際に上のオーナーさんの運転と、この区間のタイムを比べてみると、大体33秒の区間で3秒の差です。
モータースポーツを知っている人なら、このタイム差の意味はわかるでしょう。


この短い映像には、色々な運転のヒントが隠れていると思います。
ブレーキングのタイミング、ステアリングの切り方、アクセルオンのタイミング、コーナーに対する車の姿勢、ハンドル舵角に対して車が通るライン、車速、ステアの戻し方、等、色々とわかると思います。
まあ、私の運転のネタばらしの様なものですね…。
参考にしたい人は、参考にしてみて下さい。

もちろんこの運転は、今までに書いてきた練習の延長線上にあります。
ただ、荷重曲げを始めとした今までに書いてきた練習、例えば資料映像1の様な練習運転がまだ出来ないのに、コースで実践するのはまず不可能です。
これは、安全なマットの上でもバク転出来ないのに、いきなりコンクリートの上でバク転をやる様な物です。
確実に事故るので、ここまでの練習を完全にマスターするまでは、安全な場所以外ではくれぐれも真似しないで下さいね。

取りあえず、今回はこの辺で。
 

続く…。

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