FF車の特徴を理解する


さて、それでは乗る車が決まったところで、FF(前輪駆動)車講座を始めますか。

どうしてもノーマルのFF車を手に入れられなかった人は、裏ワザとしてレンタカーを借りるという方法が有ります。
一人で借りると高いので、何人かで借りるのも手です。 ただ、保険の適用範囲には注意しましょう。
ただ、これは勧めている訳ではありません。 「自分の車で練習するように」と、念のために書いておきます。


さて、 車の性能を出す運転をするには、まずその車の特徴を理解する必要が有ります。
ちなみに、、、
「車の運転に駆動方式など関係ない」と言う人もいますが、それは半分当たっていると思います。
それは、初級者は駆動方式以前に、車という乗り物の基本操作や技術に問題が有ると言う事でしょう。
例えば、荷重が前に乗ってない状態でハンドルを切ってコーナーの入り口で姿勢を作れずに、「FFは曲がらない。FRだとアクセルで曲がる」、と言ってFRでパワースライドで曲げている人などは典型 例です。
逆にアクセル操作が雑で、後輪駆動車だとリアがフラフラと不安定になりカウンターステア(修正舵)を当てていて、FFの方がトラクションがいいとか、リアが安定していると言う人もいますね。

しかし車をキッチリ動かす基本が出来る中級になってくると、駆動方式があまり関係ないと思ってくる時期が有ると思います。「ああ、車なんてみんな同じなんだー」って感じに思える時ですかね。
しかしながら、更に車の性能をキッチリ出せる中級以上になってくると、やはりまた駆動方式が関係あると思ってくる場合が多いと思いますし、実際に関係あります。

個人的な経験から大ざっぱに言うと、駆動方式の差が大きいと思う人は初級者と上級者、少ないと思う人は中級者って感じかな?
しかし、実際に駆動方式により特徴や運転方法の違いが有る事は、間違いない事実です。
よって、その違いを学ぶことは重要でしょう。



さて、それではまずFF車の特徴とは何か考えてみましょう。
まず第一に、FF車の特徴は、前輪が駆動している事です。 ってまあ、当たり前ですが、重要な事です。
そして次に、車の前部、つまりフロントが圧倒的に重い事ですね。 エンジン、ミッション、デフ、ドライバーなどの重量物は、全部フロントに載っていますからね。 逆に後ろはガソリンタンクが有る位で、軽いわけです。
そして最後に、後輪が駆動していない事ですかね。 突っ込みが来そうなくらい当たり前な事ですね。

ところでFF車には、いわゆるハイパワー車ってないですよね? せいぜい250馬力以下って所でしょうか。
まあ、車重によりますが軽量な車ならばそんなもんですね。
一般に200馬力も有れば相当大きい方で、大きめの馬力だと、トラクションコントロールが付いている場合が有りますね。
4駆は別としても、同じ2駆でも後輪駆動車では300馬力オーバーの車が沢山有るのに、どうして前輪駆動にはハイパワー車が無いのか不思議だと思いませんか?
まあ、トップページに書いてある項を全部読んでもらえば(特にブレーキの話)、ちょっと考えれば答えは分かりますね。
ヒントは、FFとはフロントエンジン、フロントドライブの略ですが、リアミッドシップエンジン、フロントドライブの車なんて無いですよね?

もう分かりましたね? でわ答えです。
駆動輪に荷重が掛からないと、トラクション(路面に駆動力を伝える力)が掛からない、つまりホイールスピンしてパワーを伝えられないからです。
サスペンションとブレーキ性能の関係に書いた通り、車は加速時には後輪に荷重が掛かり、減速時には前輪に荷重が掛かるのが自然の法則です。
つまり、加速時に荷重が抜ける前輪を駆動輪とする前輪駆動車は、少しでもトラクションを得るために、フロントを重くせざるを得ないのです。
そのために、重いエンジンはフロントに載せるしかないのです。

FF車にハイパワー車が無いのもそのためです。
加速力が強ければ強いほど、後ろへの荷重移動量が増え、駆動輪の荷重が減るので、トラクションが掛からないのです。
つまり前輪駆動車は、物理法則を考えると、構造上エンジンパワーを上げられない訳です。

純粋に速く走るという事を考えると、エンジンパワーを上げられないというのは致命的ですねぇ。
よってFF車(特にノーマル車)はどんな車でも、常にパワー不足との戦いだという事を覚えておくと良いと思います。
これらより、FF車はその少ないパワーをいかに出せるかと、いかにトラクションを掛けられるかが非常に重要となります。
何度も書きましたが、車の性能を出すとは、外界と車とを唯一、物理的に繋げている「タイヤ」の性能と、唯一の原動機である「エンジン」の性能をいかに出すかということで、それ以上でも以下でもありません。
それを学ぶのに、FF車は適しています。
パワーが有り過ぎて、アクセルを踏めないようなFRから練習を始めるのは、私は上達の遠回りだと考えています。


さて、これらを総合してFF車の特徴を考えると、FF車は物理的にアンダーステア、つまりフロントが先に限界を超える素性を持った車で有る、という事が分かってくると思います。

まず 第一に、始めに書いた通りに駆動輪が前輪、つまり操舵輪で有るために、車のヨー(車体を回転させる力。詳しくは力のモーメントを参照。基本的に同意です。)を作るのに必要な、前輪の横グリップが小さくなってしまいます( これも詳しくは摩擦円を物理するの項参照)。
つまりヨーを作りにくいわけですね。

そしてこれも始めに書いたように、フロントが重いという特性は、これまたヨーが作りにくいわけです。
(もちろん、リアが重くてもヨーは作りにくくなります。 重いエンジンは、真ん中にあるのが一番ヨーが作りやすいですね。 こちらの項に、その辺の話が詳しく書かれています。)

そしてヨーが作れたとしても、コーナリング中には前輪の横グリップが少なく、更にフロントが重いというダブルパンチの特性で、遠心力で車のフロントが外へ外へと行こうとします。
これは重要なので、エンジン搭載位置による、基本特性のページを是非見てください。

さて、FF車の持つこれらの特性は、パワーは出せないし、アンダーステア特性だしと、速く走るためにはいい事が何も無いように見えます。
実際に、F1を始めとしたフォーミュラカーやレーシングカーでは、FF何て駆動方式は有りませんよね。
(ラリーカーでは、昔はFFでWRCに出ている車でも有りましたが、今はどうなのかちょっと 調べていません。 ただラリーカーはどの車もレギュレーションで、リストリクターによってパワーが大体300馬力以下に抑えられているので、パワーによるデメリットはFF車でも比較的出にくいようです。 更にWRCよりパワーの低いクラスのラリーでFFが多いのは、そのためでしょう。 詳しくは後述。)


逆にFF車のメリットを考えると、ズバリ、スタビリティー(安定性)の高さですかね。
アンダーステア特性という事は、つまりフロントが先に限界を超える(滑る)ので、スピンしにくいわけです。
実際に、濡れた道や雪道、ダート道などの低μ路では、後輪駆動車と比べればずっと走りやすいですよね?
後は結構重要なのが、FRと比べると車重を軽くしやすい事ですかね。
FF車は普通は全てトランスアクスルになるので、デフとミッションは一体構造だし、プロペラシャフトもないので。
後輪なんて、ドライブシャフトもなく転がってるだけです。

さて、FF車の特徴というのは大体こんな感じですかね。
しっかりと車の性能を出すためには、この特徴をまずは頭に叩き込んでおく必要が有ります。

でも何か、FFの特性を知れば知るほど速く走らせることが出来ない気がしますね。
実際にそれは間違いではなく、ハイパワー車を含めた無差別級になると、今でも一般にFF車は遅いとされているようです。
舗装路であれば、パワーが同じでもFR等と比べて曲がらなく、遅いとされていますね。 私も昔はそう思っていました。

しかし結論から言うと、、、乗り方次第でFF車はとてつもなく速く走らせることができます。
極端な話、中級者が運転するハイグリップタイヤを履いたスポーツカーや、ハイパワー4駆ターボ車に、1500ccクラスのタイヤを含めて、フルノーマルのファミリーカーやミニバンでも勝てるほどです。
それこそ、「始めに乗る車」に勧めたような車でです。(まあ、誰も信じてくれませんが(笑))

ただそのためには、今までのセオリーや、常識とされていたFFの運転とはかなり違う理論や技術が必要となります。

まあ、絶対的な速さの話はとりあえず置いておいて、まずは車を上手く動かす理論と技術と練習方法を、少しずつ書いていきましょう。

続く…。


Back        Top