人生色々、アンダーも色々


さて、前回速くコーナーを曲がるためには、「究極の所はいかにアンダーステアを出さないか」だと書きましたね。
そこで今回は、アンダーステアについてちょっと書いてみましょう。

以前に、一般に言われているアンダーステアとか、オーバーステアとか言う言葉は、厳密には正確ではないと言う話をしたと思います。
一般に車の世界では、 前輪が先に限界を超えるのがアンダーステア、後輪が先に限界を超えるのがオーバーステアだと言われていますが、厳密には違います。
現実には、オーバーステアの自動車など存在しません。 カートやフォーミュラカー、その他特殊な車には存在するかもしれませんが、自動車は、多少改造したところで恐らく無理でしょう。

つまり、全ての車はアンダーステア特性を持つと思っておいて大丈夫です。
しかし、アンダーステアにも色々ありますね。
ちょっと典型的な例を見てみましょう。

図1 前輪が先に限界を超えるアンダーステア

図1は、一般に最も良く言われているアンダーステアですね。
いかにも「曲がり切れない」って感じですねぇ。
これは、フロントが先に限界を超えるアンダーステアです。

図2 4輪が同時に限界を超えるアンダーステア

次に図2は、4輪が同時に限界を超えるアンダーステアです。
何となくキッチリセッティングされた車が、本当に限界を超えた時に出る、最適なアンダーステアに見えますねぇ。

図3 後輪が先に限界を超えるアンダーステア

さてさて、次に図3のアンダーステアです。
これは良くオーバーステアだと言われていますが、実は後輪が先に限界を超えるアンダーステアです。
スピン挙動になっていますね。


さて、このようにアンダーステアにも色々有る訳です。
どれも曲がり切れないことには変わりありませんが、それぞれ車体の自転のスピードが違いますねぇ。

それでは解説に入ります。
良く車は、「タイヤのグリップを超えたスピードでは曲がれない」と言いますが、それがタイヤの横方向のグリップ力での、滑る限界速度を指すのならば、それは嘘です。
実際に、ノーマルのFFの走りを見てみるに書いた、EUシビックの走行は、完全にタイヤのグリップの限界を超えています。

さて、それではちょっと上記の3種類のアンダーステアを考えてみましょう。
まず図1に書いたアンダーステアは、私が「救いの無いアンダーステア」と呼んでいる物ですね(笑)。
これは、車体の回転不足です。 前輪が先に限界を超えて滑って、姿勢が作れていません。
特にパワーオーバーに持って行けないFF車では、どうあがいても、この状態から何とかする事は難しそうですねぇ。
これは、絶対に作ってはいけないアンダーステアですね。

次に図2のアンダーステアです。 これは、4輪が同時に限界を超えて滑り出したアンダーステアですね。
エンジン搭載位置別の、最大グリップの出し方の項に、このようになるのが、一番大きな遠心力に対向出来る状態だというような事を書きましたね。
もちろん、これは間違ってはいませんが、エンジン搭載位置別の、最大グリップの出し方に書いたように 、車が静止している、もっと言えば、原動機が動いていない車での正解です。
まあそのために、わざわざ車を円盤に乗せて回すモデルにしたんですが。

ただこれは今までに最適だと言われていた物なので、これはこれで今までの常識的な、一つの答えでしょう。
実際に今でも、レーシングカー等は普通に運転すると、このような限界の超え方をするようにセッティングしてあるんじゃないかな?

そして次に図3のアンダーステアですね。
これは良く、オーバーステアと言われていますが、本当は後輪が先に限界を超えたアンダーステアです。
このアンダーステアは、スピン挙動っぽいですね? つまり、公転に対して、自転回転が速いアンダーステアです。
でも実はこれが一番、救いの有るアンダーステアです。
技術によっては、消すことが出来るアンダーステアですね。

さて、 何度書いたか忘れましたが、もう一度重要な事を書くと、、、

「 車の性能を出すとは、外界と車とを唯一、物理的に繋げている「タイヤ」の性能と、唯一の原動機である「エンジン」の性能をいかに出すかということで、それ以上でも以下でもありません。 」

しかしこれを読むと、タイヤの性能とエンジンの性能を分けて考えているようですが、実は違います。
タイヤの曲がるためのグリップを、本来持っているグリップよりも上げるために、エンジンの駆動力を借りる方法が有るのです。
つまり、エンジンの力を使って、本来存在しないはずのタイヤのグリップを引き出すのです。

タイヤのグリップを超えたグリップ力を出すの項 に書いたのは、正にそれを物理的に証明した物です。

ちなみに 私はこれが出来るかどうかが、中級者と上級者の境だと思っています。
車は、タイヤのグリップを上げてコーナリングスピードを上げるためには、ある程度(車重やタイヤのグリップによって決まる)のパワーが必要となります。
それはコーナリング時に遠心力に対抗するために、存在しないはずのタイヤのグリップを出すために、最低限のエンジンパワーが必要となるからです。
ちなみに私はそれを、「コーナリングのコントロールに必要なパワー」と呼んでいます。

逆に言うと、それ以上のパワーは練習には必要ありません。 (直線が速くなるだけです)
始めに乗る車選びに書いた車は、その最低限に必要なパワーを持っているので、問題ありません。


さて、今回書いたように速く曲がるためには、とにかく車体にヨーを付ける、つまり回転させる必要があります。
そして、ヨーを自由自在に作るためには、いわゆる荷重移動や、曲げるためのブレーキなど、かなり難しい技術が必要となります。
特に練習に勧めたFF車では、アクセルでヨーを作る事はまず不可能なので、難しいですね。
でも逆に言えば、FF車でヨーを自在に作れるようになれば、他の駆動方式ではもっと簡単に作れるようになるでしょう。

ちなみに 「かなり難しい」と書いたのは、私が本当にこれが完璧に出来ていると思う人を、今までに1度も見た事が無いからです。
でも実際には、理屈とコツをつかめば、それほど難しくありません。
これから書く理論を理解して、書く通りの練習をすれば、きっとすぐに出来るようになるでしょう。


それでは、FF車を速く走らせるために最初にして最大のキーポイントとなる、この「ヨー」の作り方について説明して行きましょうか。

続く…。

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