四輪駆動車を速く走らせる運転 その1



さて、それでは具体的な操作について順を追って書いていきましょう。
ここで書くコーナリングは、ある程度の速度域から減速してコーナーに入るような典型的なコーナリングを例としますね。


1,出来る限りの強いブレーキングでコーナーの入口で荷重曲げを行う。

まずコーナーへのターンインで、二輪駆動車同様に荷重曲げを使ってリアを滑らせます。
ですが、センターデフの作用でこの時にリアを滑らせるのは二輪駆動車よりもきっと難しいはずです。
よってどうしてもリアが滑らないコーナーでは、ブレーキを少し残してハンドルを切ってあげるのもアリです。
高いスピードから侵入できる場合や、低ミュー路の場合ではその方がリアが出やすいでしょう。

ただし中低速域から侵入するケースでは、おそらくブレーキは残さない方がリアを出しやすいと思います。
強くて短いブレーキで瞬間的に荷重曲げにてヨーを作り、その後は出来る限り速度を落とさずに慣性でリアを出すようなイメージでやる方がリアが出てくれると思います。
何れにしても、FFやFRと比べてより強くブレーキを踏めることが必須となります。

ここで一つコツを書くと、始めはブレーキを離す位置がコーナーの奥目、別の言い方をすれば少し突っ込み過ぎたくらいの方が上手くいくと思います。 コーナーの入り口からリアをずっと出し続けるのはかなりの上級レベルです。
このターンインでうまくタイヤが滑ると、多分初めはとても怖く感じるでしょう。 FFやFRとは違う感触でリアが出て、スライド時に四輪全ての限界を超えているようなフィーリングになる為とても怖いのですよ。

何というか、「車が横転するんじゃないか?」みたいな恐怖を感じるのです。
ですがこれが出来るようになればコーナリングの70%はマスターしたことになります。
二輪駆動車と同様に、ここが最も重要かつ難しいポイントです。
詳しい理論と手順は本気で速くなりたい人へ・・・に書かれているFF車でのやり方と同じなので、ここでは省略します。(そちらを読んでいない方は、まず先にそっちを読んで下さいね)

ただしFF車の方がマスターするのが遥かに簡単なので、環境が許せばやはりFF車から練習をスタートするのがお勧めです。
同じ様にリアを出そうとすると、四輪駆動車はFFやFRと比べて侵入スピードが高くないといけないし、ブレーキとハンドル操作のスイートスポットも狭くなるため難易度がグッと上がります。

当然ですが、練習はくれぐれも安全な場所で行って下さいね。
それと本気で速くなりたい人へ・・・に書いたのと同じ様に、タイヤはグリップの低いもので練習することをお勧めします。
その方が遥かにイージーですからね。

そしてこれが出来るようになってからステップ2に進んで下さい。


2,ステア操作とアクセル操作

さて次のステップですが、これは四輪駆動車特有の操作となります。
ここの操作は実はある意味で鬼門であって、おそらくスポーツ走行の経験がある人ほど苦労するポイントとなるでしょう。
これは理屈も操作も、またそれを言葉で説明するのもとても簡単なのですが、本能的に体が思った様に動いてくれないのですよ。
特に今まで主に後輪駆動車をマスターしてきた上級者ほど難しいと感じるはずです。

では解説に入りましょう。
 
の操作にてリアがズルっと外側に滑って大きなヨーがつく、つまりスピン挙動のような状態に一瞬入ります。
四輪駆動車はFFやFRと比べてなかなかリアが滑りませんが、滑るときには相当な速度だし四輪が滑るので結構唐突感を感じる事が多いでしょう。 上記のように多くの人は「ドキッ」として怖いと感じるはずです。

そう、スポーツ走行の経験がある人ならそこで反射的にカウンターステアを当てるはずです。
そしてブレーキペダルから一旦足を離すなり緩めるなりをして、スピン挙動が収まるのを待つはずです。
或いはドリフト経験者ならば、カウンターステアを切ったままアクセルを踏む人もいるかも知れませんね。

ですが、ここでカウンターステアを切っていては永久にトラクションステアを使ったコーナリングをすることはできません。
カウンターステアを切るのは二輪駆動車(主に後輪駆動車)の走らせ方であり、これを四駆でやるときっと二輪駆動車のコーナリング速度に負けるでしょう。

ならばどうすれば良いのか?
ここで最も大事なことを書きます。

四輪駆動車は、この後輪駆動車でカウンターステアを当てるまさにそのタイミングで、ハンドルの舵角は一切動かさず一定のまま、アクセルをオンにします。

言い方を変えれば、アクセルオンがカウンターステアの操作の代わりになるようなイメージです。

ええ良くわかります。 スピン挙動になれば反射的にカウンターステアを切っちゃいますよねえ。
ましてやスピンしそうなそのままのハンドル舵角でアクセルを踏んで加速しようとはなかなか思わないでしょう。

経験者ほどカウンターステアを切るタイミングが体に染み付いているため、これは“わかっていてもなかなか出来ない”のです。
でも四輪駆動車でカウンターステアを切るとリアタイヤのスライドは完全に止まってしまい、下手をするとカウンターステアを切った方向に車がすっ飛んでいこうとします。
ここが四輪駆動車の運転で最も難しいところかもしれませんね。
 

実際にこの操作通りにやってみて、カウンターステアを切らなかったらスピンしちゃう人もいるかも知れませんね。
でもアンダーステア方向の失敗と比べてその失敗は簡単に治せるし、また速く走れる可能性を秘めます。
基本特性がアンダーステアである四輪駆動車は、とにかく入り口から出口まで、一旦作ったヨーが戻らないようにすることが第一優先なのです。
ヨーが一度戻ればトラクションステア効果は消えるので、そのままスピードを落として低速でアンダーステアと戦いながら曲がるか、或いはもう一度ブレーキで前荷重を作ってヨーを作り直す必要があるでしょう。
何れにしても、大幅にタイムロスとなって四輪駆動車のコーナリングとしては失敗です。
 
実際にやってみてスピンしたり思ったよりもオーバーステアになって安定しないという人の原因の殆どは、“アクセルを踏むタイミングが遅すぎる”ためです。
ハンドルの舵角を戻そうと考えるよりも先に、アクセルを踏むタイミングをもっと早めるようにしてみてください。 ← 超重要です

これらの操作がうまく決まれば、ハンドルを切ったまま四輪を使ったトラクションステア効果が出せて、超高速コーナリングが出来るはずです。
そして理想的には、アクセルを開けるにつれてセンターデフの作用でヨーが少しずず戻って行き、コーナーの出口付近でヨーが戻って四輪による半グリップ加速を使った立ち上がりが出来れば完璧です。 ハイパワー車ならば、きっとしびれるような立ち上がり加速を味わえるでしょう。
そしてその時のラインは自然と小Rイン・大Rアウト走法になっているはずです。


結論だけ言えば、これが四輪駆動車の最適解の具体的な操作と走らせ方です。
とにかく四輪駆動車は、ターンイン、旋回、立ち上がりの全てが速すぎるのです。
駆動方式を問わず、これ以上速いコーナリングは現時点では思いつきません。
是非マスターしてみてください。
 
ちなみに練習するに当たり、 ターボ車やオートマ車ではアクセルを踏んでから駆動がタイヤに掛かるまでラグがあるため、それを考慮して早めにアクセルを踏む必要があります。 よってマニュアル車やエンジンレスポンスのいい車の方がイージーにトラクションステアを使ったコーナリングが出来ると思います。

また四駆は滑っていてもトラクションが強烈なので、パワーもある程度有った方がやりやすいでしょう。
或いはスタッドレスタイヤの様なローグリップなタイヤを履くのもオススメです。
それでもきっと普通に曲がるハイグリップタイヤを履いた車を追い回すことも可能なはずです。 
(以下の動画は以前にも載せましたが、前を走るのは土屋圭市選手ドライブの255タイヤを履いたRX-7。 中谷選手ドライブのエボは225タイヤ)




次回はコーナリングにおいて電子制御センターデフをどの様に使うかや、ビスカスデフならばどの様にセッティングをするかなど、ハードウェアの話も含めてこの理想的なコーナリングをするための練習について書いていきます。

是非、最適解を追い求めてみましょう。

続く……。


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